兵庫・太子町の消防操法大会に「消火栓の部」 苦肉の策は意外と実用的?

柴田 直記 柴田 直記
大会で使用される「消火栓」
大会で使用される「消火栓」

 全国的に見ても珍しい「消防操法大会」が兵庫県太子町に存在している。このほど開催された同町の「第40回消防操法大会」。一般的な「ポンプ車の部」「小型ポンプの部」に加え、この町では「消火栓の部」も行われている。

 同町元消防主任によると、昭和59(1984)年の消防団員数は機動分団と村分団の重複登録で延べ1000人程度だった。そこでこの年、二重籍をなくして各村6人にするなど457人に定数変更。するとポンプ車が置けず、小型ポンプも持たない分団が出てきた。彼らは従来の操法大会では出場できない。これが他の市町村と違った大会形式を導入した経緯だ。

 当時をよく知る同町の前消防団長で、まとい会揖保郡支部長の嶋澤清美さん(77)は「全部の分団が操法大会に出られるよう、3人で出場できる消火栓の部を作った。揖南消防本部(現太子消防署)にお願いして、全国消防操法大会操法実施要領にのっとり、消火栓に見合った操作要領を作成してもらった」と古い記憶を掘り起こすように語った。

 ということで、どこの分団にも必ずある消火栓を使って演技する消火栓の部がこの年に誕生。初年度の大会には20隊を超える分団が出場し、昼またぎで、町からおにぎりを支給して技を披露し合ったという。

 現在、1地区に登録される分団員数は原則6人。小型ポンプの部は1隊4人なのだが、3人しか集まれないということで、消火栓の部の出場に踏み切る分団もある。

 例年の大会では、グラウンドに埋設した簡易消火栓に大会当日、つまり1年間で1日だけ、ポンプ車が常時3キロ圧で送水するといった方法で火点を倒すように後方に待機する。

 消火栓の部は自動車ポンプの部や小型ポンプの部と違って、優勝しても全国大会に進めるわけではない。しかし、消火栓水利を適切かつ迅速に扱うことを目的とするこんな操法が全国に広まれば、消防団員がスキルアップされて初期消火がよりスムーズに行われ、火災による被害を最小限にとどめることも十分に期待できるというものだ。他の自治体でも取り入れてみてはどうか。

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