通知表の「所見」欄や家庭訪問を無くしたある中学校の挑戦―負担減のカギはPTA改革

広畑 千春 広畑 千春

 教員の多忙化やPTAの過剰な負担が問題になる中、今年、神戸市内のある中学校で、通知表の「所見」欄への記入を取りやめました。この中学校では、毎年4月に行っていた家庭訪問も2、3年生は希望者のみとなり、教員も保護者も大幅な負担減に。とかく慣例が重視されがちな学校という組織にあって、改革のカギは「PTAと学校側との連携」でした。

 その学校は、神戸市垂水区にある市立桃山台中学校。住宅街にあり、生徒数500人ほどの中規模校です。教員の働き方改革が求められ、同校でも自動採点システムを導入するなど業務量削減を図ってきましたが、その中で教員らに聞き取りをして浮かんできたのが、通知表にある「学習及び生活についての所見」欄の問題でした。

 これまでは成績以外の生活面を中心に手書きで記入してきましたが、本年度から道徳が教科として評価対象に。文部科学省によると「生徒一人ひとりの成長に着目し、よい点や可能性、進歩の状況を積極的に受け止め、励ますこと」に留意し、自分と違う立場や考え方の理解や多角的な見方といった点を評価する―となっており、「所見と内容が重なってしまう部分が多々あった」(福本校長)といいます。

 実際、別の中学の教員は「昔は注意すべきこと、直して欲しいことを書き込んでいたが、今は否定的なことを書くと怒る保護者も少なくない」とも。「結果、所見欄には良い面だけを書くようになり、いわば『ほめ殺し』状態。道徳の評価もスタンスは同じなので、最後に所見を書く時には、内容を必死でひねり出しているのが実情」と打ち明けます。

 そこで、桃山台中学校では今年5月にPTA運営委員会で意見を聞くことに。特に異論もなかったため、手紙とメールで周知した上で1学期の通知表には「今年度より文章表記はありません」と記して配りました。教員からは「通知表の作成にかかる時間が大幅に減った」との声が上がり、保護者からの苦情や問い合わせは特になかったといいます。

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