福本校長は以前勤務していた市立本多聞中学校で、PTA広報誌などを無くす代わりに、教師と「ガチンコ」で意見交換できる場を設けるなど改革を推し進め、「PTAのトリセツ~保護者と校長の奮闘記」(世論社)を保護者の今関明子さんと共著で出版。その画期的な手法を、各地の講演会などで紹介しています。
桃山台中学校でも、毎年4月に行ってきた家庭訪問を今年から1年生のみにし、2・3年生は希望者だけ行うことにしました。その際も検討段階でPTA側に「正直、無くしたらどう思いますか」と率直に打診。保護者からは「仕事を休めない」「片付けやお茶出しなど気を遣う」など廃止に賛成意見が出る一方、「入学直後の1年生は直接話す機会が欲しい」「希望者もいる」との意見があり、これを取り入れて実施したといいます。
「家庭訪問が始まったのは半世紀以上も前。当時は電話がない家もあり、何かあれば先生が家に行って伝えなければならなかったが、今は違う」と福本校長。「『生徒の家庭環境や生活環境を知る』という理由もあるが、実際は玄関先だけで、そもそもプライバシーに踏み込むべきでない、という時代。すぐ懇談もあり、意義は薄れている」と指摘します。学校運営の面でも、授業内容が増え、時間数確保に躍起になる中、家庭訪問期間中は4~5日短縮授業をしなければならず、教員の負担も大きかったといいます。
こうした改革に対し、ある保護者は「通知表の所見はたった一言だし、正直見てませんでした。むしろ懇談で直接話した方が詳しく分かる。家庭訪問も、学年が始まってすぐ『心配なことは』と言われても正直困るし、負担の方が大きかった。本当に助かる」と話します。
「学校内だけの工夫で残業時間を削るのはもう限界に近い。保護者と腹を割って話し合い、お互いが負担に思っているものを知れば、無理だと思っていたことも変えられる可能性がある」と福本校長。PTA改革は、究極の教員の働き方改革につながるのかもしれません。