「岩合光昭写真展 こねこ」(京都新聞など主催)が、京都市下京区の美術館「えき」KYOTOで開かれている。動物写真家・岩合光昭さんが国内外で撮った子猫の姿を約150点の作品で見せる。会場を訪れた岩合さんに、仕事に込めた思いなどを聞いた。
―出発点は。
19歳のとき、動物写真家の父の助手としてガラパゴス諸島に同行しました。目の前で鳥が営巣し、海に潜るとアシカが肩をたたく。自然ってこうなんだと実感しました。それまで、ファッションなどの分野で写真家になろうかと考えていましたが、この仕事なら自分の考え方を表現できるのではと思いました。
「ここだ」という場所に猫が連れて行ってくれた
―作品では猫を敬愛する姿勢が見えます。
撮影では「猫さま次第」と言っていますが、撮りたい映像を決めてかからないことが大事。猫は地域や人々の暮らしの中に生きている。猫を通して、街や国が見えてきたらと思います。
「ねこの京都」という写真集を作ったのですが、これも「京都の猫」ではなく、猫を通して見た「ねこの京都」。常寂光寺でご住職の黒猫を撮影していたら、緑のコケの上に真っ赤なモミジが降りつもった場所があり、そこにその黒猫が立ったのです。あまりに美しくて、つい「日本に生まれてよかった」という言葉が口をついて出た。それを僕に言わしめた京都はすごい場所だと思って。京都に世界中から人が来るのは、同じ感覚を誰もが持つからではないか。そのことを猫が教えてくれた。京都を取材してよかったと感じた瞬間でした。「ここだ」というまさにその場所に猫が連れて行ってくれた気がしました。
―会場にも、猫に向けて「自分がかわいいと知ってるでしょう」という解説文があります。
猫は、ここに自分が立てば一番際立つという光などをわきまえている。特に雄猫は目立つところをよく知っています。階段を上がった一番いい光が当たるところにいたりね。雄の生き方、雌の生き方、子どもの生き方、全部違います。さまざまな物語を猫は秘めていて、それを一つ一つのシーンで感じることがある。人が一人一人違うように、動物も一頭一頭違う。それを作品で伝えられたらと思うのです。