鹿児島県の、とある会社の倉庫で生まれたニャン吉くん。母猫が連れて行かなかったようで、たった1匹でいるところを保護された。ニャン吉くんは、お散歩や泳ぎが大好き。飼い主さんと日本全国、あちらこちらを旅している。
会社の倉庫で生まれた子猫
2009年4月28日、ニャン吉くんは、鹿児島県鹿児島市にある会社の倉庫に、たった1匹でいたところを保護された。野良猫のお母さんが倉庫の中で子猫を産んで、数匹ずつ別の場所に運んで引っ越ししたようだったが、この会社の社員さんが見た時には、ニャン吉くんだけがい残ってしまっていた。ゴールデンウィークの長期休業に入るところで、倉庫のシャッターを下ろしてしまうため、このままにはしておけない。ひとまず、女性事務員がニャン吉くんを連れ帰った。
牛や馬を飼っている農家で育った飯法師(いいほし)さんは、動物を育てることに慣れている。ゴールデンウィークにニャン吉くんに会いにくいと、思うようにミルクを飲まないと飯法師さんに相談があった。飯法師さんは、「スポイトでミルクを与えているというので、哺乳瓶を使い、体温くらいに温めてから与えたらいいのではないか」とアドバイスした。事務員さんが住んでいるアパートはペットを飼えないアパートだったので、「こんなところで飼ってはいけない、隣近所にも迷惑だ」と言ったが、事務員さんは、涙を流して「私が育てます」と言うので、仕方なく、その場を後にした。
散歩が大好きな猫
飯法師さんは、宮崎県に転勤になってからも2週間に一度くらいは鹿児島のニャン吉に会いに行った。4歳になるまで事務員さんが育てたが、その後、2度目の鹿児島勤務になった時に、事務員さんからニャン吉くんを託された。アパートの住人から苦情があったわけではなかったが、やはり、ペット可の家で堂々と飼ったほうがいいということで、飯法師さんが会社と相談して、ペット可のアパートに住むことになったのだ。いまでも事務員さんは、ニャン吉くんに時々会いにくる。
ニャン吉くんは、事務員さんと暮らしている時も窓から外を見ていることが多かった。「外が好きなんだな」と思った飯法師さんが近所の公園に連れて行くと、楽しそうに歩いていた。散歩に行きたくなると猫用のケージを頭でぐいぐい突いて玄関の下まで持ってきて、ケージに登ってドアノブを回す。「相当外に出たいんだな」と思い、週に1度か2度、散歩に出るようになった。
「電車やバスに乗せても鳴かないので、遠出もできそうだなと思いました。美しい日本の風景をバックに写真を撮りたいと思い、日本47都道府県をニャン吉と一緒に回ることにしたんです」
旅するニャン吉くん
最初は沖縄に行き、北海道にも行き、2019年4月3日には47都道府県を巡り終えた。ニャン吉くんは人気者で、日本だけでなく海外でも写真集が発売されている。
「写真を撮りたいから行くのではなくて、ニャン吉が喜ぶから行っています。飛行機だと荷物扱いになってかわいそうなので、遠方には車や新幹線を利用しているんです」
ニャン吉くんは、早朝から3kmくらい散歩をするのを日課にしている。海で泳ぐのも得意だ。
「いままでは名所旧跡をバックに撮影することが多かったので、北海道のラベンダー畑や宮崎のひまわり畑など、これからは四季折々の草花をバックにした写真を撮ってみたいですね」
ニャン吉くんと飯法師さんの旅は、まだまだ続く。