旅行者は住民の敵なのか…欧州観光地で深刻化する問題と拒否反応 日本は大丈夫?

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スペインは世界2番目の観光大国。観光客らで混み合う空港=スペイン・マジョルカのソン・サン・ジョアン国際空港
スペインは世界2番目の観光大国。観光客らで混み合う空港=スペイン・マジョルカのソン・サン・ジョアン国際空港

 既存システムと新興システムとの相容れない関係ではタクシー業界と運転手付きレンタカー(VTC)の緊張関係もある。今年1月にはマドリードを中心にタクシー運転手で作る労働組合が無期限ストライキを実施。国際見本市の会場付近をタクシーで封鎖するだけではなく、VTCの車両を追跡して走行不能な状態に追い込んだとして二人のタクシードライバーが逮捕される事件も起こっている。

 他にも多すぎる旅行者の流入により複数の問題点が出ている。スペインの主要都市での住宅価格・賃料の値上がりにつながっているとの意見があるほか、都市部の交通渋滞と大気汚染、果ては深刻な水不足との関連を指摘する声もある。

 近年では、かなりの数の旅行者の訪問が居住者側の嫌悪感を招くケースもある。スペインでは「トゥーリスモフォービア」という造語も登場。旅行者拒否反応といった意味で、トゥーリスモ(観光)とフォビア(恐怖症)を組み合わせたものだが、「恐怖症」という危険回避といった枠を飛び出し、さらに攻撃的な行動に出る手合いも出てきてしまった。

 過激派グループは観光地に旅行者を非難するようなスプレー書きのメッセージを残したり、地元民の生活改善を優先するよう求める座り込みを実施。さらなる強硬派は街中に駐車中のレンタカーを標的として、タイヤに穴を開けたり、フロントガラスを割るといった“実力行使”を展開。夜中に白装束・マスク姿でのこういった行為をビデオ撮影し、「活動報告」よろしく自身のソーシャルサイトに掲載している団体も存在している。

 また、ヴェネツィア(イタリア)では中心部でホテルが乱立、住宅価格の高騰など不都合な点ばかりな状況から居住者が郊外または別の町へ移り住み事実上の街機能が立ち行かない現象が発生。「町の中心部がテーマパーク化する」との危惧の声が上がっている。

 以上の問題点から、数の多さが正義、とばかり無計画に大量の旅行者を受け入れてきたこれまでの観光業界のビジネスモデルを根本から見直すべき時が来た、とする専門家の意見がある。

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