伏見稲荷大社(京都市伏見区)の神幸道(裏参道)に並んでいた露店が3月末、全て姿を消した。一帯は近年、外国人観光客の急増とともに露店も増加。通行の妨げになる上に、観光客のごみのポイ捨てなどの問題もあり、住民から苦情が絶えないことで、市が対応に乗り出した。新年度を迎え、外国人に人気の観光地の光景が徐々に変わりつつある。
4月上旬の平日午後。京阪伏見稲荷駅から本殿へと続く神幸道は、外国語が飛び交い、国内外の観光客で埋め尽くされていた。だが、南側の筋に並んでいた十数軒の露店はなくなり、道幅が随分広くなった印象だ。
訪日客増で露店が常設的に
旅行の口コミサイトで外国人に人気の日本の観光地1位に5年連続で選ばれた同大社。外国人観光客の急増に呼応し、常設的に出店する露店が近年、多数見られるようになった。
「露店が多く出る日といえば、以前は毎月1日と、正月三が日、初午(はつうま)の日ぐらい。だが最近は年中、お祭りのような状態だった」。稲荷学区の各種団体でつくる「稲荷自主防犯安心安全まちづくり協議会」の宮永清治会長(79)は振り返る。
露天商らは道路管理者の市の許可を得ずに出店し、不法占拠状態が続いていた。神幸道は近隣住民の生活道路でもあり、市には「人や自転車が通れない」「緊急車両が入れない」といった苦情が多数寄せられ、近くの稲荷小が通学路の一部変更を余儀なくされる事態になった。
こうした状況を改善するため、市伏見土木事務所は昨年3月から露天商らに計8回指導を行った。また、伏見署も昨年度は道路使用許可を出さなかった。市と露店の関係者との話し合いの場も持たれ、最終的に今年3月末で立ち退くことで露店側が了解した。
ごみの総量は減ったけれど
新幸道の露店が撤退したことで一帯のごみの総量は減った。とはいえ、境内にある露店や一部の店舗では引き続き、食べ歩きできる飲食物を提供しており、ポイ捨ても全てなくなったわけではない。
さらに対策を進めるため、同大社や学識者、鉄道事業者、地元の商店街などが連携する「伏見稲荷大社周辺の住みよいまちづくり会議」が、区役所深草支所の呼び掛けで3月20日に発足。商店街では今後、店ごとにごみ箱を設置することなどを検討するという。
加えて、外国人観光客を中心とする慢性的な混雑やマナーを巡るトラブルなど、課題は山積みだ。宮永さんは「それぞれの国の文化や習慣の違いもあり、規律をこちらから一方的に押し付けることは難しい。地元だけでは限界があり、市も観光客を呼び込むからには覚悟を決めて、真剣に対策を講じてほしい」と要望する。