連日の酷暑で「だるい」「身体が重い」「食欲がない」「やる気が起きない」などと感じる人も少なくないはず。「夏バテ?」と思いきや、「男性更年期障害」だったというケースもあるという。ただの夏バテでなかった場合、どのような対策が必要になるのか。専門医の見解をうかがった。
「Dクリニック東京メンズ/Dクリニック大阪メンズ」男性更年期外来の担当医・辻村晃氏(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授)によると、男性更年期障害の平均患者年齢は50代だが、最近では30代にも増えているという。
女性の更年期障害は閉経期によるホルモンバランスの乱れが原因なのに対し、男性は「ストレスによるテストステロン(男性ホルモン)の低下」が原因。女性よりも年齢の幅が広く、30代男性にもリスクが高まる。また、うつ病などと勘違いされやすいことも特徴だという。その原因として、親の介護や会社で中間管理職に昇進したことなどによるストレス増加が指摘され、「デスクワークや事務系の仕事に従事」「身体が中高年へと変化していく中で若い頃のイメージが残っており無理してしまう」といった要因も考えられる。
自覚症状は3つあるという。1つは「心(精神)」で、「やる気がしない」 「集中力が続かない」「楽しめない」などの症状。 2つ目は「疲れやすい」「筋力が落ちた」「ビール腹になった」などの「身体」の変化。 3つ目は「性」の変化。「性欲がわかない」「就寝時に勃起(朝勃ち)しない」などの症状に出る。辻村氏は「夏バテの対策を取ってみても症状の改善の兆しが見えなかったら、男性更年期障害を疑ってみる余地があります」という。
同クリニックでは3つの対策を提案している。
(1)男性用日傘の活用
今年は環境省が「男女問わず日傘を活用することが望ましい」と推進している。環境省の発表によると、日傘の利用によって汗の量が17%減るという。「周囲の目が恥ずかしい」「男が日傘なんて‥」という時代ではないのだ。
(2)飲酒は控えて「まごわやさしい」食事を。
夏はビアガーデンや納涼会などで飲酒する機会が増えるが、アルコールを摂取し過ぎると眠りを浅くしてしまう。飲酒は控え、食事は「まめ類」「ごま」「わかめ」「やさい」「さかな」「しいたけ」「いも」の頭文字を取った「まごわやさしい」を合言葉にした食材の摂取が推奨される。
(3)夏こそ筋トレ!
男性更年期障害の予防には筋トレも効果的。テストステロン増加に最も効果的なのは、大腿四頭筋と呼ばれる太ももの筋肉を増やすことだという。
以上の3対策について、辻村氏は「日傘の活用に関しては『エビデンスがない』ため断言はできません」としつつ、真夏の温暖差による身体の影響について解説した。
「一般的に体温が高いと、血流がよく、酵素活性が高く、脂肪が減少しやすいと考えられています。体温が急に下がると、これらの反応から体調を崩しやすく、身体的なストレスが生じる可能性は否定できず、そのことからホルモンバランスを崩すことにつながるリスクもあり得る話だとは思います」。そこで、日傘が注目される。辻村氏は「日傘を使わず外出していると、会社やお店に入った時のエアコンの気温差で身体的なストレスが生じる可能性は否定できず、ホルモンバランスを崩すリスクにはなりえます。そのため日傘を使って気温差を減らせると良いかもしれません」とした。
辻村氏は「幸福感が高いと男性ホルモンが増加することも分かっていますので、勝負事で勝つことや女性とデートするなども意外と効果的です」と私生活の充実も大切であると補足。「ホルモン補充療法を行うことで大きな改善が見られます。気軽に男性更年期外来のドアをたたいてください」と呼びかけた。