堀ちえみのブログに「死ね」で書類送検 ネット上の書き込みの危険性を解説

平松 まゆき 平松 まゆき
堀ちえみ
堀ちえみ

 舌がんと食道がんの手術を受けたタレントの堀ちえみのブログに、「死ね」などと複数回にわたって脅迫的な書き込みをしていた主婦が書類送検された。ネット上での投稿は匿名性が手伝ってつい足かせが緩み、過激になってしまいかねない。その危険性について、かつて歌手デビューも果たした元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

リツイートも名誉毀損に該当

 Q ネットでの誹謗中傷について、法律ではどのような罰則がありますか?

 A 刑事的責任としては、主なものとして名誉棄損罪、侮辱罪、脅迫罪、があります。まず、法定刑が3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金である名誉棄損罪(刑法230条1項)と、法定刑が拘留又は科料である侮辱罪(刑法231条)とは、いずれも他人の社会的評価をおとしめる行為を罰する点では同じですが、「事実」を摘示したかどうかで区別されます。これらに対して脅迫罪(刑法222条)は、相手やその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に害悪を告知することによって成立する犯罪で、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が法定されています。

 Q 例えばある芸能人の名前をあげて「不倫している」などと投稿することはどのように考えられますか?

 A 特定の芸能人を名指しして「Aは不倫している」「Aは性的接待を受けた」などの投稿は、不倫や性的接待といった「事実」を摘示していますから名誉棄損罪が成立し得ます。「事実」というより出来事といったほうが分かりやすいかもしれません。これに対して「Aは馬鹿でマヌケだ」という投稿は、そう思っている人の意見や感想にすぎず、「事実」(出来事)ではありませんから侮辱罪に問われるというわけです。

 Q 名誉棄損罪にいう「事実」が、根も葉もない嘘である場合と本当のことである場合とで違いはありますか?

 A いいえ。名誉棄損の内容は虚偽であるか真実であるかを問いません。ですから先の例でいうと、Aが不倫していない場合はもちろん、仮に本当に不倫している場合でも、その書き込みによってAの社会的な評価がおとしめられたのならば原則として名誉棄損になります。本当のことなら何を書き込んでも構わないというわけではないので注意が必要です。

 Q 脅迫罪について教えてください。ある人物のブログに「死ね」「殺す」と書いたことは、「身体に害悪を告知する」と考えられることから成立するのですか?

 A はい。成立します。仮にその人物の居住地を知らず、土地勘がないとしても成立します。たしかに脅迫罪が成立するためには実現可能性が必要とされますが、実現可能性がないと言えるのは「お前に天罰がくだるだろう」というように発言者にコントロールできない場合をいうのであって、土地勘がない程度のことでは実現可能性は否定されません。

 Q 自分で書き込むだけでなく、「タレントのAは不倫している」という他人の書き込みをSNS上で広める行為も法的に問題はありますか?

 A はい、リツイートも名誉棄損に該当するとした裁判例があります。これは刑事ではなく、民事的責任が争われた事件でしたが、東京地裁平成26年12月24日判決は、「リツイートも、ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるもの」として精神的損害に対する賠償責任を認めました。この裁判例の理屈からすると記事の「シェア」についても同様の判断になると思われます。このように自分自身の発言ではないとしても、賠償責任が問われる可能性は十分ありますから、なんらかの情報発信には常に責任を持たなくてはいけないということです。

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