実はパン好き京都人の通う老舗ベーカリー 年代物カメラで写した昔ながらの菓子パンや総菜パン

浅井 佳穂 浅井 佳穂
だ円形の「京のメロンパン」などが並ぶ番重(田村さん提供)
だ円形の「京のメロンパン」などが並ぶ番重(田村さん提供)

 「和食」や「京料理」のイメージが強い京都だが、1世帯当たりのパンへの支出金額が全国トップクラスというと意外に思う人も多いのではないだろうか。そんな国内有数のパン好きが集まる街で、創業100年の老舗パン店に焦点を当てた写真展が開かれている。おなじみの菓子パンや総菜パンを収めた写真からは、ほのぼのとした店の雰囲気が伝わってくる。みやびやはんなりといったイメージと異なる、普段着の京都をのぞいてみてはいかが。

 写真展は、京都市左京区一乗寺大原田町のマヤルカ古書店で開かれている。撮影したのは、年代物のフィルムカメラで京都のパン店や手作り市を取材する写真家田村泰雅さん(32)だ。田村さんは、パン店をテーマにした写真展をこれまでに7回開いた。天然酵母を使用するこだわりの店や、レトロな雰囲気が漂う店などを取り上げてきたが、今回は上京区今出川通千本東入ルにある老舗パン店「大正製パン所」に焦点を当てた。

 大正製パン所は1919(大正8)年の創業。現在地から約1・5キロ南の京都府庁付近で初代が店を始めたが、その後、現在地に移った。店の所在地付近は西陣織で知られる西陣地域の一画。同店のパンはかつて、一帯に多く住んでいた織物職人たちに愛されたという。

 田村さんによると、名物はカレーパンやクリームパン、総菜パン。一点ずつ、店主の河戸舜二さんらが焼き上げ、「番重[ばんじゅう]」と呼ばれる木箱に入れて余熱を冷まし、仕上げている。

 写真展の会場には、パン店の内部や職人たちが働く様子を写した17点が並ぶ。だ円形の京都ならではの「京のメロンパン」が焼き上がる様子をはじめ、あんパンに詰めるため番重に整然と並べられたこしあん、粒あんの写真などがある。

 さらに、人気のヒレカツサンドが店頭で陳列されている光景や、河戸さんが焼きたてのパンを窯から取り出す瞬間のほか、河戸さんと妻の晴美さん、従業員らがそろって笑顔を見せる作品も展示されている。

 田村さんは「写真から懐かしい雰囲気を感じ取ってもらいたい。こんな風にパンが焼かれているのかと知ってもらうと、食べるパンの味も変わるのでは」と話す。写真展は8日まで。3日には大正製パン所のパンの販売も行う。

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