パン屋さんの中に本物の機関車が!?異色の組み合わせの背景に“父子のロマン”

山本 智行 山本 智行

 京都府の最南端に位置する木津川市に意外な組み合わせのパン屋さんがあると聞き、おじゃましてきた。「パン・オ・セーグル」の売りは、天然酵母100%のパンとなぜかブルートレイン。おいしそうなパンの向こうに、時代を感じさせるド迫力の電気機関車が鎮座している。どうしてこんなことに?その裏には家族の絆と“ブルトレ愛”があった。

 JR「木津駅」を降りて徒歩5分ほど。国道24号線を左折し、しばらく行くと、とんがり屋根とレンガの建物が見えてきた。側面の大きな窓の向こうには大きな物体に「JR」の2文字。ということは間違いない。例の店はここしかない。

 中に入ると、焼きたてパンのいい香り。と同時に迫力満点の機関車の顔が目に飛び込んできた。いまにも動き出しそうなほど。正面に「EF66-49」の文字盤があり、ヘッドマークは「令和」と掲げられていた。

 車体は1980年代から2000年代にかけ、活躍した寝台特急「ブルートレイン」をけん引した前方部分をカットしたもので、もちろん本物。聞けば高さ3・5メートル、幅2・9メートル、奥行き3メートル。いまにも壁や天井につきそうなほどパンパンだ。

 どうして、店の中に機関車を展示しようとしたのだろう。オーナーシェフの泉川賢二さん(59)に代わって2代目の智彦さん(25)に経緯を聞いてみると、アンパンマンのような優しい顔で愛と涙の物語を明かしてくれた。が、その前に、この機関車の簡単なプロフィルを紹介しよう。

 1974年9月28日、金沢生まれ。「EF66」は国鉄時代に高速貨物列車用に開発され「最もけん引力がある」と称賛されたとか。目の前の彼はその49番目。85年からは東京-下関間のブルートレインをけん引する役目を担った。2009年、東京-大分間を走ったのを最後に引退。その後は「アルバイトのようなことをして」10年9月に廃車となった。

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