JR岡山駅から東へ徒歩10分。岡山市北区にある「不二花店(ふじはなみせ)」は明治時代から150年以上続く老舗の花屋さん。ここで季節の花々に囲まれて過ごしているのが、茶トラの「みるく」(オス、推定8歳)だ。飼い主で従業員の不二惠子さん(59)にとって、みるくは「弟のような大切な存在」という。
人懐こくてオジサンが大好き
みるくは8年前、近くの公園で、ダンボールの中に捨てられていた3匹の子猫の中の1匹です。まだ生後間もない頃、近所の女性が見つけて保護し、里親を探しながら育ててくれたんです。離乳期を迎えた頃に譲っていただきました。残りの2匹も新しい飼い主さんにもらわれていったそうです。
ちょうどそのころは、18年間一緒に過ごしてきたキジトラのメス「めぐ」が腎不全で亡くなり、四十九日が過ぎたくらいでした。猫のいない生活がさびしくなり始め、「もしどこかに猫がいたら教えて」と、友人に頼んでいたんです。その友人の娘さんと、3匹を保護した女性が知り合いで、縁が繋がりました。
めぐは臆病で知らない人を見るとすぐに逃げ出していましたが、みるくは人懐こく、お客様が来ると駆け寄っていきます。なぜか中高年の男性が好きみたい(笑)。みるくがやってきてくれたおかげで、めぐが亡くなって心にぽっかり空いた穴がふさがっただけでなく、我が家も笑顔でいっぱいになりました。ちょっと生意気、ドジなみるくですが、今では私の弟のような大切な存在です。
うちは1階が店、2階が生け花教室と倉庫、3階は自宅で、みるくは1階から3階まで、自由に行ったり来たりしています。店入口横のショーケースは元々、花をストックしておくスペースだったのですが、1歳になる前、背もたれが猫の顔の椅子を置いたら、そこでひなたぼっこをしてくつろぐようになり、みるく専用のテラス席になりました。店の前を通る人は「本物の猫がいる!」とびっくり。それで次第に「猫のお花屋さん」と呼ばれるようになったんです。