悩める即応予備自衛官…訓練日数は年間30日、仕事との折り合いをどうつける?

平藤 清刀 平藤 清刀
スケジュール調整には毎回苦心している
スケジュール調整には毎回苦心している

「即応予備自衛官はボランティアですか?」とよく訊かれ、そして「年に30日も? よくやりますね」と呆れられる。

「ボランティアといえなくはないけど……」

返答に困る。なぜなら、「ボランティアですか?」と訊いてくる人は、たぶん無償で汗水流して働く人をイメージしているはずだ。だが、英語の「Volunteer」はもともと「志願兵」とか「義勇兵」という意味で、いわゆる無償労働とは異なるからだ。

即応予備自衛官はたしかに「志願」だが、一般的にイメージされるボランティアではない。毎月16,000円の手当と、訓練に出頭したら階級に応じて10,400~14,200円の訓練手当が支給される。強いていうならば「有償ボランティア」だろうか。そこまで“こじつけて”、「ボランティアですよ」と答えることにしている。言葉の意味は、間違っていないと思う。

月ごとの手当と訓練手当を年間でトータルすると、60万円弱になる。これが多いか少ないかの判断はお任せするけれども、1年=12か月のうち1カ月分に相当する日数を、志願とはいえ自分の時間を削って訓練に出頭している者たちの志を、どうか真っ当に評価してほしい。

さて、即応予備自衛官や予備自衛官が、訓練のために部隊へ赴くことを「訓練出頭」という。出頭日の約2週間前になると、「訓練招集命令書」が簡易書留で郵送されてくる。この訓練招集命令書は防衛大臣名で発行されるから、訓練とはいえ、いや訓練だからこそ重みがある命令ということだ。

即応予備自衛官には年間30日の訓練出頭が義務付けられていても、それぞれ“娑婆”(自衛官が使う俗語で、駐屯地や基地の外の世界を指す)で仕事をもっているから、30日を一度に消化することはとうてい無理である。通常は8~12回に分けて出頭して、合計30日になるようにスケジュールが組まれている。だから防衛大臣直々の命令書は、その都度送られてくるのだ。

実際に年間30日も訓練に出頭しようと思ったら、職場にも家庭にも少なからず負担をかける。とりわけ職場との折り合いをつけることに苦心するようだ。雇用主が「行ってこい」と理解を示してくれても、訓練に行っている間は出勤しないから、同僚たちに仕事のシワ寄せがいく。そうなると有給休暇を取りづらい空気になってしまい、肩身の狭い思いをするという。逆に同僚が理解を示してくれるのに、雇い主が理解してくれないこともある。「国の制度だから邪魔はしないけどね、協力もしないよ。仕事に穴を開けないようにして、勝手に行ってくれ」という態度を取られることもあるという。

また訓練日が子供の学校の参観日や運動会と重なっても、他に日程がなかったら、後ろ髪を引かれる想いで訓練に出頭せざるを得ない。子をもつお父さんたちは辛いのだ。そんなこともあって、せめてもの罪滅ぼしの気持ちなのか、奥さんと交渉して「給料は家に全額入れる」という条件で、その代わり手当を小遣いに充てている者もいる。月で割れば5万円弱だから、お小遣いとしては妥当な金額か。

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