大阪・中之島のビジネス街。高さ200メートルの中之島フェスティバルタワーに“異空間”がある。2018年3月にオープンした中之島香雪美術館だ。「市中の山居」の言葉がぴったりと合うようなその空間で、古き良き日本の文化が光を放つ。
中之島香雪美術館は、神戸・御影の本館の開館45周年を記念して開設されたオフィス街の美術館だ。外の喧騒と館内の落ち着いた雰囲気が対照的。館長の臼倉恒介氏は、「大阪の中心地にありながら、非常に静かで落ち着いた空間を用意していますので、ゆっくり美術品と向き合うことができます」と話す。
所蔵しているのは、日本や東アジアの古い美術品。仏教美術、書跡、中近世絵画、茶道具、武具などの幅広いジャンルを取り揃えている。それらはすべて、朝日新聞社創設者の村山龍平氏が収集していたもの。同氏は、明治維新ののちに廃仏毀釈の風潮が進む中で、古い日本の美術品の保護に積極的に取り組んだ。
常設展示の目玉は、茶室「中之島玄庵(げんなん)」だ。重要文化財・旧村山家住宅(神戸市)に立つ茶室「玄庵」が原寸大で再現されたもの。茅葺き屋根、土壁、柱などにも本物と同じ材料が使われ、伝統的な技法で造られている。茶の道に傾倒した村山の趣向を示した、重要な展示品だ。