―早速ですがこのポエム、誰が書いているんですか。
「全部僕やで。でもポエムなんて思ったことはないね。その時々で思ったこと、言いたいことを書いただけ。まあ、女の人の気持ちになろうとはしてるけどな。こう見えて僕、乙女座やねん」
―文章がおかしくて、どういうテンションで書いているのか心配になるものもあります。
「そらおかしいよ。だって素人やもん。でも、最初見たときは『アホやん』って笑っていた人が、夜に独りで読んで泣いてしまうこともあるらしいで」
―そうなんですか!それぞれの文章に「ムレスナさんなんとか語録」とありますが、じゃあムレスナさんというのはディヴィッド社長のこと?
「まあ雰囲気やね。自分かもしれないし、架空の女の人かもしれない」
―味には絶対的な自信があるわけですよね。
「そう、スリランカのセイロンティーで、ムレスナ社のもの。茶葉の鮮度、コンディションがとにかく最高で、水で抽出してもおいしい。ムレスナの紅茶がいかにすごいかということを、もっと知ってもらいたいですね」
―野暮なことを伺いますが、その味を前面に押し出すために、パッケージをもっとシンプルにするという選択肢は…?
「紙の箱で売り始めたのは2001年か2002年頃からやったかな。今とは違う、シンプルなよくあるパッケージやってん。でもぼちぼちしか売れんかった。それで、5年くらいして今みたいな感じに変えたら売れるようになった。やっぱりスタイリッシュなだけではダメということ。『ナニコレ?』くらいの方が売れんねん。そら最初は『こんなふざけたこと書いて…』と言われたこともあるよ。でも人に言われてやり方を変えるなんて、そんな主体性のないアホみたいなことないやろ」
―今は毎月のように新作を出しているそうですね。
「cube boxは、6月は9種類出しました。7月はないけど、8月にはまた6種類出る予定です。それから、創業35周年の記念ボックスも4種類。フレーバーの組み合わせは無限やから、いくらでもできる。よそではちょっと真似できへんと思うわ」
―でもその分、商品名とポエムが必要になるから大変ですね。ちなみにこれまでの“作品”で思い入れのあるものはどれですか?
「ないね(即答)」
―えっ!
「世の中に送り出した時点で、僕の中では全て過去やから。もう次のこと考えてるよ。だからたまにパッケージ見て、『うわ、ええこと書いてるやん』と自分で感心することもあります」
「あと、パッケージの雰囲気とかから、スピリチュアル系の人と思われたり、オーラがすごいですねとか言われたりするけど、全然よ!スピリチュアルのこと、全然わからへん。ただ、強運の持ち主であるのは間違いないかな。僕、手相もすごいねん。ちょっとそこらへんにはいない、無茶苦茶面白い人間やと思うで」
いかがだっただろうか。あのポエムの作者は、有閑マダムどころか、無茶苦茶エネルギッシュな男性だった。ここでは書き切れなかったが、大学を四浪して後がなくなって起業した話や、数千万円の借金を抱えた話、ディヴィッドと名乗るようになった話など、ポエム以上にご自身のエピソードの切れ味も抜群。やはり、実際に会ってみないとわからないことって…、あるのよねェッ!
インタビューを終え、店内に陳列されていた商品の文章を片っ端から読んでいると、こんなものに出くわしてしまい、たまらず膝から崩れ落ちた。
「ありがとうございます!手にとってこのキューブを見て買おうと思って下さっているのですねェッ」
「うれしい!ムレスナさんは…」
「そして、今、この文章を読んでいこうとしていらっしゃるのねェッ!いや~だ、うれしい!」
私はこれを夜に独りで読んだら泣いてしまうかもしれない。うふふふッ。