石垣島の保護犬殺処分ゼロに貢献 大阪の保護・譲渡団体に聞く

岡部 充代 岡部 充代

 大阪・高槻市で犬の保護・譲渡活動を行っている「犬の合宿所in高槻」(代表・伊藤順子さん)は、これまでに約600頭の犬を一般家庭に譲渡してきました。その大半は沖縄や鹿児島の離島出身の子たち。ボランティアさんの協力を得て、多くの犬の命を救ってきた活動についてお聞きしました。

――離島の犬を迎えるようになった経緯は?

伊藤 2012年に仲間と設立した譲渡会開催団体で譲渡会をしていると、「雑種を飼いたい」「保護犬を迎えたい」という人たちが多いのに、大阪には保護犬が少なかったんです。ニーズがあるのに…と思っていた頃、石垣島(沖縄)から犬を引き取った人と知り合ったり、本土からの移住者で、島の保健所(八重山保健所)の情報を発信している人がいることも分かりました。そこからですね。島では救えない命も、大阪へ来れば幸せになれるんじゃないかと。

――石垣島からは何頭くらい迎えた?

伊藤 トータルで90頭近く引き取りましたが、間もなく「殺処分ゼロ」を達成したので、今は徳之島や奄美大島など鹿児島の離島が多くなりました。石垣島が殺処分ゼロになったときはうれしかったですね。人に対する怯えがひどい犬は、引き出させてもらえなかったのですが、そういう子も家庭犬になれるという実績を作ったら、引き出させてくれるようになりました。それまで掛かっていた処分費を、避妊・去勢手術や元の飼い主探しのための費用に回せるようになったので、保健所本来の姿に変わったと思います。

 

――離島からとなると、輸送費だけでもかなり掛かるのでは?

伊藤 航空貨物便で送ると高額になるので、できるだけ「バゲージ・ボランティア」さんにお願いするようにしています。石垣-関空や鹿児島-伊丹の便に乗る方に、手荷物として犬のケージを運んでいただくんです。離島の場合、島から本土までの飛行機もあるのでタイミングが難しいですが、その区間だけ貨物にしたり、現地のボランティアさんに協力していただいたり。犬を運ぶためだけに鹿児島や徳之島まで行ってくださる方もいるのですが、それは申し訳ないですし、予定が変更になることもあるので、旅行や出張のついでに引き受けてくださるのがありがたいですね。

――こちらは保護施設がないようですが、犬たちはどこで生活を?

伊藤 一緒に活動している岩井(文恵)さんのお宅で、多いときは10頭くらいお世話してもらっていた時期もありました。頭数が増えてからは「預かりボランティア」さんですね。里親さんが見つかるまでおうちで預かってもらい、家庭犬としての生活に慣れさせてもらうんです。先住犬がいると、その犬がいろいろ教えてくれるので助かります。今は二十数名の方が協力してくださっていますね。

 

――里親さん探しは譲渡会で?

伊藤 譲渡会もありますし、個別にご連絡をいただいて「お見合い」してもらうこともあります。心掛けているのは、たくさんお話することです。譲渡前はもちろん、トライアル中も譲渡してからも、小まめに連絡してコミュニケーションを取り、犬の様子を確認しています。もっと簡単に譲渡するところもあると聞くので、「面倒くさい」と感じる方もいるかもしれませんが(苦笑)、犬に幸せになってもらうためですから。その分、譲渡後のご相談も多いように思います。頼っていただけるのはうれしいことですよね。

――今後も離島の犬を中心に?

伊藤 都会では「保護犬を迎える」ことが文化として定着しつつあると思うので、体が続く限り、続けていきたいと思います。

 

 室内飼育が大半となった都市部と違い、離島では外飼いや放し飼いの犬もまだまだ多く、さらに避妊・去勢手術の必要性が十分に理解されていないこともあって、自然繁殖してしまうことが少なくありません。その結果、保健所への収容頭数が増え、殺処分という運命をたどる犬も…。離島から都市部に移動させて里親を探すという伊藤さんたちの発想が、多くの犬の命を救っています。

■市民ボランティア「犬の合宿所in高槻」 http://inunogassyukusyo.seesaa.net/

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