「神の使い」稚児に△のそり込みは何の意味? 京都・祇園祭の秘密を探った

京都新聞では書けない

浅井 佳穂 浅井 佳穂
長刀鉾の稚児、理髪の儀(2019年6月30日)

 京都の祇園祭で最も有名な山鉾の一つ「長刀鉾[なぎなたぼこ]」は、八坂神社の「神の使い」とされる稚児が乗り込むことでも知られる。その稚児の髪型には大きな特徴がある。後頭部に三角形のそり込みを入れるのだ。もちろんファッションではなく、ちゃんとした意味がある。「理髪の儀」と呼ばれる、稚児にかみそりをあてる儀式に密着し、その秘密を探った。

 6月30日、京都市中京区の理髪店に、今年の長刀鉾の稚児である中西望海君(10)と、補佐役にあたる「禿[かむろ]」の杉本崇晃君(11)、竹内瑛基君(9)の3人が集まった。この日行われたのが「理髪の儀」。かつては稚児宅で行われていたが、近年は特定の理髪店で行われている。

 稚児や禿の髪型はいわゆる「坊ちゃん刈り」。ただ、後頭部のうなじ部分に底辺3センチ、高さ5センチ程度のそり込みが入る。その子のうなじの形状や髪質などによって大きさは異なる。

 長刀鉾の専属理容師である阿部喜一さん(79)がはさみを手にすると、30分ほどで全体の髪型は完成した。その後かみそりを手に、うなじ部分をきれいにそっていく。すぐに白々とした肌が見えてきた。

 三角形は竜のうろこをかたどっており、魔よけの意味があるという。しかし、それだけではないと、長刀鉾で稚児の世話をする「稚児係」の岡崎昭一郎さん(45)は語る。「稚児や禿は烏帽子[えぼし]をかぶる。そのひもの結び目がそり込み部分に来るようになっているんです」。魔よけだけでなく、実用性もあるのだ。

 この理髪の儀は、7月17日の前祭[さきまつり]巡行までに4回も行われる。儀式を終えた稚児の中西君は、自身の後頭部のそり込みを鏡で見て「ちょっとスースーする。思っていたより三角形が大きい」と照れくさそうに話した。

 京都市内の理髪店でひっそりと行われている儀式。祇園祭の伝統は意外なところにも息づいている。ま、京都ではちょっとは知られている話ですけど。

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