パン屋さんの中に本物の機関車が!?異色の組み合わせの背景に“父子のロマン”

山本 智行 山本 智行

 では、どのような縁でここに運ばれ、どうやって搬入したのか。そもそも、忙しいパン作りの合間にブルートレインに乗っての家族旅行が泉川家の楽しみだった。息子は“撮り鉄”になり、父は「いつかブルートレインを店に置きたい」と願った。

 そして2011年7月、いまの店舗を新築する際にスペースを確保し、その日を待った。そこへJRの運転手が来店。店内に飾られた鉄道写真を見ているうちに賢二さんの夢の話に移り、ブルートレインが売りに出されているとの情報を得て、購入(価格は非公表)した。

 「劇的な出会い」と振り返るが、実はここからが大変だった。JR貨物・北陸ロジティクスで整備、再塗装され、いざ搬入となったところで計算ミスが発覚。すでに取り付けていた窓を外さないと入らないことが分かり、ジャッキを使っていると、なんとそれが破損するハプニング。当初3時間の予定が26時間もかかったという。

 以来、もうすぐ丸8年。店の人気者としてライ麦のパンを意味する「パン・オ・セーグル」をけん引して来た。智彦さんも後を継ぎ、甘納豆入りの食パン「大納言ブロート」、バター豊富な「十勝」、もちもち食感の「望月」などを新メニューに加えた。

 「本当は警察官か自衛官になるつもりでしたが、ブルートレインが来たからには後を継ぐしかないと思いました」

 一風変わった組み合わせの背景には父子のロマンがあった。

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