コロナで見えた鳥居の奥行き 「デジタルスケッチ」で描く伏見稲荷大社

辻 智也 辻 智也

 朱色の鳥居が連なる参道を歩くと、赤いトンネルの奥の方まで見通せることに気づく。ああ、人がいないからか。久しぶりに見た光景のように感じる。

 9月下旬の秋晴れの日、伏見稲荷大社(京都市伏見区)を訪ねた。新型コロナウイルスの流行で観光客は激減し、2年前までの混雑は見る影もない。

 その分、人波にせかされずに辺りを眺められる。秋の日差しが、無数の鳥居の影を石畳に映しだす。あちこちのキツネ像に、顔や体形の個性があることに気づく。なぜか、境内に何匹もネコがたたずむ。

 参道は、何軒もの店がシャッターを閉めていたが、キツネのお面のせんべい屋「総本家いなりや」が開いていた。

 コロナ流行「第5波」が峠を越え、人は戻りつつあるというが、3代目社長でせんべい職人の郷正清さん(60)は「京都に旅行って、まだ周りに言いにくいんでしょうね。お土産を買う人は少ないですわ」と漏らした。

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 輪郭線を現地でスケッチし、それをパソコンで水彩画風に彩色する手法で、京都と滋賀の「今」の風景を届けています。

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