「家族や親戚、友人、近所の人が引き取ってくれなかった場合、ペットの行先は、愛護団体しかない」と、NPO法人ペットライフネット(以下、ペットライフネット)の理事、吉本由美子さんは言う。
弁護士の檜山洋子さんによると、「遺されたペットは、相続人の意志ひとつで処分される可能性もあります。遺言書がない場合、遺産分割協議をすることになりますが、遺産は、法定相続人だけが相続できます。ペットは相続できませんし、ペットの世話をしてくれそうな人や近くの他人も相続できません。そのため、飼い主亡き後のペットの世話については、生前に遺言書に明示しておく必要があるのです」
将来、ペットが困らないようにしておきたいこと
ペットに遺産を遺しておきたいと思う人もいるだろう。結論から言うと、ペットに遺産は遺せない。
弁護士の檜山洋子さんは、「残念ながら民法では、動物は動産、所有されるものなので、ペット自身は相続できないのです。ペットは、相続するのではなく相続される方なのです」
「ペットに財産を遺すことそのものではなく、ペットが終生幸せに暮らせること、そのために必要なお金を残してあげることが大事です。そのためには、まず、信頼してペットを託せる人を探し、ペットの飼育をしてもらうための財産を遺贈する(負担付遺贈)遺言を作成しておくという方法もあります。負担とは、ペットの世話という意味です」
「遺言は早々と用意する気にはなれない」とためらってしまう人は、エンディングノートを作っておいてはどうだろう。ペットライフネットでは、「ペットを愛する方ためのエンディングノート・ペットの終活×人の終活」を発行している。表表紙から開くと、ペットの基本情報や健康状態、一日の過ごし方、トイレはどうしているか、かかりつけの病院など、詳しい情報を書けるようになっている。裏表紙から開くと、人のエンディングノートになっていて葬儀に関することや資産状況について記入できる。
ペットライフネットでは、4種類のわんにゃお信託の運用もしているが、そうしたペット信託の利用についても積極的に考えたい。
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▼東京都が発行している、ペットを飼っているシニア世代向けの啓発用パンフレット
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/yomimono/panfuretto.files/27_shiniasedai-panf.pdf
▼NPO法人ペットライフネット
http://petlifenet.org/
▼檜山洋子弁護士プロフィール
米国ニューヨーク州弁護士。ヒヤマ・クボタ法律事務所代表。大阪弁護士会 公害対策・環境保全委員会、子どもの権利委員会、神戸CSR研究会・事務局長