人も長寿になったが、犬や猫も十数年、二十年と生きるようになり、飼い主が先立ってしまったり、老人ホームに入所したり、入院したりするケースもある。残されたペットにとって死活問題である。
ペットを遺棄する人の半数以上がシニア層
空前の猫ブーム。犬を飼う人も猫を飼う人と同じくらい多い。ペットを飼う前提として、犬や猫を終生飼養することが義務付けられているが、手放す人は後を絶たない。
日本でペットを遺棄する人の年齢の割合を見てみると、60代以上の人が56%、じつに半数以上を占めている(第34回動物臨床医学会「犬の飼育問題に関する調査から考察した飼育放棄の背景と対策」2013より)。
遺棄の理由は、
・ペットの飼育疲れ
・認知症や病気による飼育放棄
・独居老人の突然死、老人ホームへの入居など社会的な要因による。
などである。
こうして遺棄されたペットは、家族や親戚、友人、近所の人が引き取ってくれる場合もあるが、誰も引き取らない場合もあり、愛護団体が引き取った犬や猫のうち32%は、高齢者が要因である。
・飼い主に管理が必要になり、世話ができなくなった
・長期入院するから
・老人ホームに入るから
・独居老人がペットを残して死んだ
など、理由は社会的背景と密接にからむ。
東京都では、ペットを飼っているシニア世代に、万が一の時に備えるよう啓発用パンフレットを発行していて、ペットのために遺言を残すこと、ペット信託に加入することも勧めている。
子供や親戚、知人がペットを引き取ってくれると思わない
アイペット損害保険会社が、2016年、50歳以上のペット飼育者534人を対象に、「自分に万が一のことが起こった場合に備えて、ペットの引き取り先や相談相手を想定していますか」という調査をしたところ、66・9%の人が「想定している」と答え、33・1%の人が「想定していない」と回答した。
「想定している」と答えた人のうち、86・3%もの人が「家族や親戚」と答えているのだが、「たぶん引き取ってくれるだろう」と思ってはいても、口約束では、実際に困った時に引き取ってくれるという保障はない。