遺言書には、ここまで説明してきた「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」の2種類がある。自筆のデメリットについて、同相談室所属の行政書士・横倉肇氏は「自分で保管しなければならないので、紛失のほか、(自分にとって不利と感じた)相続人による廃棄や隠匿、改ざんのおそれがある」と指摘。だが、この点に関しては来年7月10日から法務局で保管できるように法改正される。
また7月1日から、被相続人以外の親族が金銭の支払いを要求できる法改正もなされる。例えば、長男(故人)の妻がどれだけ義父や義母の介護に尽くしても、相続財産の分配にあずかれなかったケースが解消される。
といった具合に、19年は「遺言の意味」について考えさせられる年となる。その意味について、横倉氏は「作った人の思いを伝え、争いを未然に防ぐ効果がある」と指摘する。
有名人の莫大な遺産相続をめぐって、きょうだい、後妻といった親族による“骨肉の争い”が何度も報じられてきたが、庶民にとっても金額の多寡は別にしても悩ましい問題だ。遺言を残した人の死後、もめないためのポイントになるのは?
横倉氏は「付言事項」だという。「これからの家族にどうあってほしいか、なぜこのような遺言の内容にしたかなど、思いを書き連ねることです。相続で争わないためにも、遺言を作った本人と家族とが生前から意思疎通をしておくこと。できれば生前からオープンにしておくことが、遺言書を円満に相続に向かわせるために大事です」と説明した。