小川氏は「石橋被告が運転席から離れていたことが気になりました。キーは抜かずにエンジンはかけたままでも、運転席から離れていたということは、背後からトラックに追突された際、本人にも相当な危険があり、石橋被告が逆にはねられた可能性もあった。外にいたわけですから、石橋被告は運転を放棄した状態だった」と分析。危険運転致死傷罪の適用が困難になる可能性もあるとみていた。
ところが今回は適用された。決め手は、停車前に石橋被告が「4度の妨害運転」をしていたこと。横浜地裁はその行為によって追突事故による家族の死傷が現実化したという因果関係を認定した。
一方、危険運転致死傷罪が適用されない場合に備え、検察側が監禁罪致死傷罪でも起訴していたことについて、小川氏は「泥棒の場合も、被害品が出ずに窃盗罪で立件されない場合に備えて、住居侵入も付けて起訴される」と例を挙げて説明し、「“監禁”について弁護側は時間が短いと主張していたが、トラックに追突されていなければ、その時間は続いていた。つまり“監禁継続中”に事故に遭った」と指摘した。
ただ、危険運転の罪が認定されたため、予備的訴因として検察側が起訴していた監禁致死傷罪の成否については言及されなかった。
求刑と判決に「5年」の差があったことについて、小川氏は「検察側はアピールも含めて、23年は思い切った求刑だと思いました。遺族が取材を受けてテレビにも出たことで世論の支持があったことも大きいです」と指摘。さらに「判決では裁判長が高速道路上で停車させた速度ゼロの状態が、同罪の構成要件の『重大な危険を生じさせる速度』とするのは、解釈上無理があるとの判断も示しながらも、危険運転の罪を認定したのは画期的と言える。また18年という判決は、よく『求刑の八掛け』と言われますが、妥当な判決だと思います」と解説した。