ひき逃げ殺人の被告に逆転無罪判決…被害者夫が心情吐露、上告へ署名活動

小川 泰平 小川 泰平

 2015年5月、静岡県浜松市のスクランブル交差点で、赤信号で停止した後、歩行者が横断歩道を渡っていたところ、車を急発進させ歩行者の中に突っ込み、主婦の水鳥真希さん(当時31)が死亡したほか、5人が死傷した事件があった。

 殺人、殺人未遂、道交法違反等の罪に問われた中国籍の被告女性(36)の控訴審判決が8月29日にあり、東京高裁は被告が「心神喪失であった」とし、懲役8年とした一審の裁判員裁判判決を破棄して無罪を言い渡した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は8日、当サイトの取材に対し、逆転無罪の判決を受けて「直接話を聞くことができた」という亡くなった被害者の夫・水鳥達也さん(35)の思いを明かした。

 小川氏によると、達也さんは「事件当日は、私の前を妻が歩いていたんです。気がついたら、私は転倒しており、妻はいませんでしたが、妻のバッグが落ちていました。車はまだ暴走しており、20~30メートル先を暴走する、その車を見るとボンネットの上から地面に叩きつけられる人が見えました。服装の色から『もしかしたら』と思い、駆け寄ると妻でした。頭と耳の辺りからの出血が酷く、何度も呼び掛けましたが、かすかに『うっー』という、うめき声が聞こえただけでした。」と涙ながらに証言したという。

 小川氏は「この事件は殺人事件として立件され、殺人事件で起訴され、殺人事件として有罪判決が下されました。精神科医の鑑定を数か月実施し、静岡地裁浜松支部は、統合失調症の病歴はあるものの、『限定的である』として完全責任能力を認め、2017年の一審では懲役8年(求刑8年)が言い渡された」と解説する。だが、2審では「統合失調症が悪化した状態であり、責任能力がなかった、地裁判決は合理性がないとされ、逆転で〝無罪〟判決がなされた」(小川氏)という。

 達也さんは、小川氏の取材に対して「(裁判所で)『無罪』と言われた時はあ然としてしまった。その後、裁判官が理由を述べていたが、全く耳に入ってこなかった」と、ぼうぜん自失となったことを明かし、「なぜ無罪判決になるのか。本当に理解できない」と無念さをにじませたという。

 小川氏は「裁判員裁判での判決が覆る逆転無罪は社会的影響が大である。東京高裁は『上告しない』と遺族に話したようです」という。上告しなければ無罪が確定する。

 達也さんは事故当時、ともに負傷した当時生後10か月で現在は5歳になった娘と浜松市内で暮らしている。「心神喪失による無罪」が納得できない達也さんは「少しでも意思表示をしていきたい」という思いから、上告に向けた署名活動をネットで始めている。

■署名活動「浜松5人死傷ひき逃げ事件無罪判決の破棄・厳罰を求めます。」は、http://chng.it/pw9m6hqq

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