医師の立場から見た反則タックル…一生を変えてしまうような行為

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
 23日に会見した日大の内田前監督(手前左)と井上コーチ(手前右)…反則タックルの余波は大きい=23日
 23日に会見した日大の内田前監督(手前左)と井上コーチ(手前右)…反則タックルの余波は大きい=23日

 行きつけの散髪屋さんに行きました。きょうこそ髪が少ないのだから値切ってもらう話を店主に切り出そうとすると、アメリカンフットボールの選手が後ろから反則タックルをされた話になりました。実は、この店には、関学のアメフット部員も来ているんです。鏡に映った自分の顔を見て憂うつになりながら、2人で「ひどい事件だ!」と憤慨しました。

 ニュースで流れていたスローモーションを見ると、無防備の人間に背部からタックルしています。強烈なエネルギーが腰部に加わることにより、身体はいったんエビぞりのようになり、その後、勢いよく頭から前方に倒れ込んでいるように見えました。

 医師の立場からみると、タックルされた部位の背骨が折れたり、脊椎(せきつい)がずれたりすることによる脊髄損傷、脊髄の過伸展による鞭打ち、脳振とうが危惧されます。脊髄損傷と一言で言っても、損傷部位によって様々な症状が出るんです。損傷部位が頭に近づけば近づくほど患者さんの生活の質は低下します。

 首を損傷すると、一生寝たきりの生活になってしまったり、ひどい場合は呼吸さえも自力でできないために、機械を用いた補助呼吸が必要になってくることもあります。簡単に言うと寝たきりで人工呼吸器につながれ、会話も食事もままならないという状態です。あのタックルされた若者が残りの人生をこのような状態で過ごすことになったかもしれないということです。

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