センバツとともに春を呼ぶ「お水取り」とは…そもそも何?

春を告げる「お水取り」。火の粉を浴びると災厄が祓われるとされている(雄央 丸山/stock.adobe.com)
春を告げる「お水取り」。火の粉を浴びると災厄が祓われるとされている(雄央 丸山/stock.adobe.com)

 関西には“春はお水取りと選抜から”という言葉がある。意味は東大寺二月堂の「お水取り」と「選抜高校野球」が終われば春がやってくるということ。この「お水取り」は同寺最大の法要で「修二会(しゅにえ)」と呼ばれる宗教行事だが、そもそもの由来は何なのだろうか?

 修二会の始まりは、752年に東大寺二月堂の開祖・実忠和尚が、夢の中で見たという菩薩整衆(ぼさつしょうじゅ)の悔過(けか)行法に倣ったこととされる。己の罪と穢(けが)れを懺悔し、天下泰平、五穀豊穣、風雨順時、万民快楽を祈願。旧暦2月に行われることから「修二会」と呼ばれる。この法要は日本全国で行われているが、東大寺二月堂のものがとりわけ有名で、通称「お水取り」として知られる。

 スタートは3月1日。「(法要は)14日まで連日行われます。僧侶が全長6メートルほどの巨大な松明(たいまつ)を振り回して、二月堂の回廊を駆け回る。その火の粉を被るため、全国から大勢の人が訪れる」(東大寺寺務所)。火の粉を浴びると災厄が祓われるとされているため、参拝者たちは先を争うように火の粉を受けて無病息災を祈るのだという。

 2週間にわたる行事で、クライマックスは12日深夜。僧侶が若狭井という井戸から、観音さまに供えるための水をくむ。この儀式こそが「お水取り」で、くみ上げた水は「香水」と呼ばれる。“水源”は若狭の国(福井県)新宮寺の鵜乗の瀬の水とされ、これが地下水となって若狭井に湧き出るという伝説だ。

 お水取りに先駆けた3月2日、福井・小浜市の神宮寺では「お水送り」の儀式が行われる。身を清めた僧侶が「エイッ」「エイッ」という掛け声とともに松明を振り回し、住職が送水文を読み上げて香水が川に流される。これが10日後、東大寺で汲み上げられるという厳かな行事だ。

 戦火も免れ、1250年以上も途絶えることなく続き「不退の行法」としても名高いお水取り。春を迎える恒例行事は、もちろん今年も新たな歴史を刻む。

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