50代会社員のAさんは、年末に妹と2人で帰省し、80代の両親が暮らす実家に3日間泊まりました。数年ぶりに訪れた実家は、廊下や居間のあちこちに段ボールや古い家電が積み上がり、以前より物が増えているように感じました。
この状況が心配になったAさんは両親に「危ないから片付けたほうがいいんじゃない」と声をかけますが、両親は「まだ使うから」と取り合いません。
そんな中、母親が廊下に置かれた段ボールにつまずいて転びそうになる場面がありました。幸いケガはなかったものの、これは放置できないと考えたAさんは、妹と2人で「少しずつでも片付けよう」と話し合います。
しかし両親は、思い出の品やまだ使えるものを手放すことに消極的で、なかなか片付けは進みません。不用品回収業者に一括で依頼する案も出ましたが、Aさんの職場の同僚が「見積もりより高く請求された」と話していたのを思い出し、慎重になっています。
このように、親が元気なうちの実家の片付けは、進め方ひとつで家族関係にも影響しかねません。では、Aさんの場合はどこから片付けをし始めたらいいのでしょうか。また不用品回収業者を選ぶ際は、どんな点に気をつけるべきでしょうか。遺品整理士の池庄司和枝さんに話を聞きました。
実家の片付けで後悔しないためには?
ー実家の片付けで、家族が後悔しやすいことやトラブルになりやすいことを教えてください。
1番多いトラブルは、物を所有する本人に確認せず、家族の判断で処分することです。「勝手に捨てられた」と本人が気分を害して、家族関係が悪くなるケースがあります。そうなると、片付けが難しくなるばかりか、信頼関係の修復に時間がかかってしまうので注意しましょう。面倒に感じても、物の所有者に確認・了承を得ることが大切です。
また、自分の価値観を押しつけて無理やり「捨てさせよう」とするのも避けたいところです。本人が残したいという物は、なるべく処分せずにそのままにしておきましょう。
ただし、本人の判断能力に不安がある場合は、重要書類を誤って捨ててしまうケースもあります。その際は、本人に分別を任せるのではなく、家族が一緒に確認作業を進めていくことが必要です。
ー不用品回収業者を利用する際、確認しておきたいポイントはありますか?
まず、その業者が「一般廃棄物収集運搬業の許可」を持っているか確認しましょう。産業廃棄物や古物商の許可だけでは家庭ごみを回収できません。許可番号の掲示や、市区町村のホームページの許可業者一覧で確認できます。
見積もりは必ず書面でもらい、内訳まで確認しましょう。「定額パック」「積み放題」といった表示だけで契約すると、作業後に追加料金を請求されるトラブルが目立ちます。複数社から取り、比較して選ぶと安心です。
また、「遺品整理士」が在籍しているかどうかも業者選定のポイントです。
さらに、買取査定ができる「遺品査定士」がいれば、処分費用から買取分を差し引いてもらえることもあります。費用を抑えたい場合は、確認しておきましょう。
ー親が元気なうちに始めておくとよい片付けや整理のコツを教えてください。
コツは、親の判断をあまり必要としない範囲や、緊急性の高いものから手をつけることです。
まず、保険証・介護保険証・お薬手帳・通帳・印鑑など、入院や介護が急に必要になった際に欠かせない書類は、一か所にまとめて保管場所を家族で共有しておきましょう。
また、床に置いた物や倒れやすい家具、賞味期限切れの食品など、転倒やケガ、衛生面のリスクにつながるものは、片付けの進み具合にかかわらず早めに対処しておきたいポイントです。
次に着手しやすいのは、実家を離れた子や孫の私物です。幼少期の学習机や思い出の品など、親の判断がいらないものから始めましょう。「置きっぱなしにしてごめんね」という姿勢で声をかければ、親の抵抗感も和らぎます。
そのうえで、玄関や洗面所など狭い場所から手をつけましょう。劣化した靴などは要・不要の判断がしやすく、片付けの達成感も得やすい場所です。物量の多いリビングやキッチンは慣れてから、判断に迷う思い出の品は最後に回すと、無理なく進められます。
ーそれでもまだ片付けることを拒否されたらどうすればいいでしょうか?
その場合は「片付け」ではなく「見守り」に切り替えましょう。重要書類の保管場所の共有と、転倒などの危険がないかの確認だけは、実家を訪れるたびにしっかりチェックしてあげてください。それ以外は無理に急がず、片付けそのものより、本人の意思と今の生活を尊重することを優先しましょう。
◆池庄司 和枝(いけしょうじ・かずえ) 遺品整理士・整理収納コンサルタント
「お片付けサポート hale pono」代表。遺品整理士・整理収納コンサルタントとして、オンラインお片付けカウンセリングや広島県内での訪問お片付けサービスを提供。「片付け」は暮らしを整えるだけでなく、心を整えるきっかけにもなるという考えのもと、一人ひとりに寄り添ったサポートを行っている。自身も実家や義父母宅の片付けを経験しており、専門知識と実体験の両面から、実家の片付けや生前整理に関するアドバイスにも力を入れている。
▽お片付けサポート hale pono 公式HP
https://halepono.net/