一部の地域では、通夜において一晩中ご遺体のそばでロウソクと線香を絶やさず焚く『寝ずの番』という風習があります。地域によって、どのように寄り添うかはさまざまです。
原作・夜馬裕さん、作画・外本ケンセイさんの作品『厭談夜話』は、夜馬裕さんが30年以上かけて集めた実話をもとにしたオムニバス形式のホラー作品です。同作の抜粋エピソード『第二十八談 寝ずの番』では、昭和時代のある地域のお通夜の様子が描かれています。
30年ほど前、高校生・茂之の住む集落では、故人が生前に指名した人が独りきりで『寝ずの番』をして、朝までご遺体を見守るという風習がありました。ある日茂之は、伯父の再婚相手の妹である、喜代の寝ずの番に指名されます。
1人暮らしの喜代に、いつも茂之が日用品や食材を届けに行かされていました。喜代は身体が不自由なため、室内にはいつも気分が悪くなる臭いが充満しています。そんな彼女はある日、栄養失調で自宅で亡くなってしまいました。
通夜の読経も終わり、いよいよ喜代の寝ずの番がはじまります。茂之は「なんで俺なんだよ…」と嫌な気持ちで臨みました。
茂之は独りきりで、寝ずの番に臨みます。すると、線香やロウソクの火が消えそうになるたびに、喜代のご遺体から気味の悪い音が鳴り出すのです。茂之が怯えていると、ふとロウソクの火が弱まります。すると喜代の顔の白い布は取れ、おぞましい顔で茂之を見つめていました。
喜代は「クズどものガキがぁ…絶対に連れていくからなぁ…」と茂之に言い、茂之や周囲の人々への恨み言を次々と放ちました。怖いけれども、寝ずの番をやめたら本当に連れていかれそうと思った茂之は、必死に火を絶やさず喜代の罵りに耐え続けます。
やがて朝になると、喜代は「あぁ…くっそう…」と言い残し、元の穏やかな顔へと戻っていきました。
茂之は30年以上経った今でも毎年、喜代の墓参りを欠かさず行っています。なぜかというと、茂之は届け物が面倒で、嫌がらせのためにわざと食材を腐らせてから喜代に届けていたのです。喜代に復讐されるのが恐ろしい茂之は、いつまでも許しを請うているのでした。
読者からは「最後の展開が怖かった…」「生きている人間が一番恐ろしい」などの声が寄せられています。そこで、作画の外本ケンセイさんに話を聞きました。
「昭和のお通夜」の空気感にこだわって描いた
―同作での演出や表現など、こだわった部分を教えてください
特にこだわったのは、怪談の舞台になっている「昭和のお通夜」の空気感ですね。当時の映像を何度も見返しながら、今の葬儀とは違う、どこか物悲しくて、それでいて家族や親戚のつながりが、しっかり感じられるような雰囲気を意識して描きました。
―寝ずの番において、ロウソクと線香の炎を絶やさなかったことには、どのような効果があったと考えられるでしょうか
「寝ずの番」の灯火については、宗派によって解釈はさまざまですが、一般的には故人が極楽浄土へ向かうための道しるべと言われています。
ただ、原作の夜馬裕さんの解説によると、医療が未発達だった時代には、仮死状態からの蘇生がないかを見守る目的もあったそうで、その話を聞いたときは「なるほど」と思うと同時に驚きもありました。
余談ですが、自分の出身地である九州では、祖父母の世代のころは、まだ火葬場が少なく、田舎では土葬も珍しくなかったと聞いています。棺桶の代わりに、丸い桶に体育座りで故人を納める際、息を吹き返して周囲が驚いた、という話もあったそうです。
―この作品は、実話に基づいて作られているとお聞きしました
このお話は、漫画『厭談夜話』に収録されています。怪談師であり作家の夜馬裕さんが全国各地で取材した実話怪談を、自分がオムニバス形式で漫画にしている作品です。
「サンデーうぇぶり」で連載していて、おかげさまでコミックスは3周年を迎え、現在9巻まで発売中です。今夏には記念すべき10巻も出る予定なので、ぜひ読んでいただけたらうれしいです。
<作画・外本ケンセイさん関連情報>
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https://x.com/hokaron1101
<原作・夜馬裕さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/yamayu_ggh
『厭談夜話』
▽掲載サイト(サンデーうぇぶり)
https://www.sunday-webry.com/episode/4855956445114741512
▽単行本第1巻(Amazon)
https://amzn.asia/d/0YHKIRn