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「一帯一路」構想で海外進出に拍車 中国人と中国企業が武装組織の標的に 安全を守るコストが習近平政権の新たな課題

和田 大樹 和田 大樹

中国が経済大国として存在感を高めるなか、海外で活動する中国人の安全確保が、習近平政権にとって重要な課題となっている。その背景にあるのが、中国が推進してきた巨大経済圏構想「一帯一路」である。

一帯一路によって、中国企業はアジア、中東、アフリカなどで道路、鉄道、発電所、港湾といったインフラ開発に進出してきた。それに伴い、中国人技術者や労働者が治安の不安定な地域にも長期間滞在するようになった。中国にとって海外での経済的影響力を拡大することは重要だが、その一方で、中国企業や中国人そのものが武装組織の標的となるリスクも高まっている。

武装組織の標的リスク高まるパキスタン

その構図が特に鮮明なのが、パキスタンである。中国とパキスタンが進める「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」は、一帯一路の主要プロジェクトの一つであり、南西部バルチスタン州のグワダル港などにも中国の巨額投資が行われている。

しかし、バルチスタンでは長年、中央政府に対する分離独立運動が続いている。その中心的な武装組織の一つが「バルチスタン解放軍(BLA)」である。BLAは、中央政府が地域の天然資源や鉱物資源から利益を得ている一方、地元住民が十分な利益を受けていないと主張し、バルチスタンの独立を掲げている。こうしたBLAにとって、中国は重要な標的となる。中国がCPECを通じてグワダル港やエネルギー、鉱業などに関与することで、BLAから見れば中国はパキスタン政府による地域の経済開発や資源利用を支える外国勢力だからである。実際、BLAは中国の投資や中国人を繰り返し攻撃してきた。

中国人や中国関連事業が攻撃対象に

2022年4月には、カラチ大学の孔子学院関係者を乗せた車両が自爆攻撃を受け、中国人教員3人を含む4人が死亡した。米国務省は、この攻撃についてBLAの指揮下にある女性自爆犯によるものとして記録している。さらに2024年10月には、カラチ空港付近で中国人技術者らを乗せた車列が攻撃され、中国人2人が死亡した。BLAが犯行声明を出し、中国人や中国の投資を標的にした攻撃であること明らかにした。

ただし、中国人を狙う勢力はBLAだけではない。パキスタンでは、イスラム主義を掲げる「パキスタン・タリバン運動(TTP)」なども活動している。TTPはパキスタン政府や軍を主要な敵としており、中国人や中国関連事業が攻撃対象となるケースもある。2021年には、北西部カイバル・パクトゥンクワ州で中国人技術者を乗せたバスが爆破され、中国人9人を含む多数の死者が出た。

アフガニスタンでも中国人への攻撃相次ぐ

さらにアフガニスタンでは、「イスラム国ホラサン州(ISKP)」が中国人を標的としてきた。2022年12月にはカブール中心部で、中国人が利用するホテルが攻撃され、5人の中国人が負傷した。米国務省によれば、ISKPがこの攻撃について犯行声明を出した。

ここで重要なのは、これらの武装組織を一括りにできないことである。BLAはバルチスタンの分離独立を掲げる民族主義系武装組織であり、中国を攻撃する背景にはCPECや資源開発への反発がある。一方、TTPやISKPはイスラム主義を掲げる武装組織であり、それぞれ異なる政治的・宗教的目的を持っている。つまり、中国人への攻撃という共通点があっても、その動機は同じではない。

安全確保を強化するほど高まるジレンマ

それでも中国にとって共通する問題は大きい。一帯一路を拡大すれば、中国企業と中国人が海外に進出する。ところが、その進出先で政治的対立や民族紛争、イスラム過激派の活動が存在すれば、中国人自身が安全上のリスクにさらされることになる。ここに習近平政権のジレンマがある。海外事業から撤退すれば、中国の経済的影響力を縮小させることになりかねない。しかし、事業を継続・拡大すれば、中国人の安全確保にかかる負担は増大する。

しかも、安全確保を強化するほど、中国側が現地の治安や警備に深く関与する必要が生じる。これは中国と受け入れ国との関係を複雑にする可能性もある。そのため、中国は現地政府に警備強化を求めながら、自国民や企業の安全確保をどこまで自ら担うのかという難しい問題に直面している。

安全上のコストをどこまで負担するのか

一帯一路は、中国にとって単なる経済政策ではない。海外に中国企業と中国人が広がることで、中国の経済的影響力が拡大する一方、その安全を守るという新たな負担も生まれる。

習近平政権にとって問われているのは、一帯一路を続けるか否かだけではない。経済的影響力を拡大しながら、海外で活動する中国人をいかに安全に守るのか。その安全上のコストをどこまで負担するのか。海外に広がった中国の存在感そのものが、習近平政権に新たな安全上の課題を突きつけているのである。  

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