被災しながらも、地域のために続けた営業……2年経ってようやく改装へ ホームセンターの報告に「応援しています」「戻ってきてください」【前編】
「市場が縮小していく中で、借金して営業を継続するのは不安しかない」
令和6年能登半島地震で店舗商品に大きな被害を受けた、石川県志賀町に立地する、ホームセンターロッキー「志賀の郷店」。被災した従業員らが片づけに尽力して1月3日午後から営業を開始……それから、もう2年。ようやく今年3月から店舗の一部の解体を開始。それでも、なお営業を続けています。
工事までに2年かかったのには理由が……。そして、休業しない現状について、社長の谷内博之さんに聞きました。
2年も休めないので「少しずつ壊して、少しずつ建てる」
当初、主に修繕するのは下水管と、店舗の前面ぐらいだと思っていた谷内さん。調査をしたところ、建物と基礎土間を支えている杭が折れてしまっていたため、「建て直した方が安い」と言われてしまいます。
同店のある地域には他にホームセンターはなく、志賀町からも「なんとか再建してほしい」と言われたそうです。ただ、建て直しにも長期間かかることがわかっていました。
「納得いかなかったので2、3のところに調べてもらったんですけど、構造がダメになっていると。土間基礎をこわして、何百本ある杭を1本1本折れていないか調べないと修繕できるかどうかもわからない。
全部壊して建てると2年かかると言われたんですよ。志賀の郷店には80人くらい従業員がいるけれど、2年間休むなら一旦辞めてもらわないといけない。2年後に来てくださいと言っても来ないでしょう。工事の間、地元の人がどこで買い物をすればいいんだという問題もある」
雇用を守り、地域住民に商品を提供するために、「少しずつ壊して、少しずつ建てる」方向で建て直すことに。国や県、町と折衝して、本来は一度で行う店舗の公費解体を「2段階」で進めることになりました。
「先にホームセンター商品売り場だった店舗の4分の1を解体し、新しく建物を建て、そこに食品コーナーを移動する。残った4分の3の店舗は、ホームセンター商品を売り切るか撤去してから解体する。そこに建物を建ててホームセンター商品を並べてオープンしようと考えているんです」
建て直しの方針が決まったのは2025年の春、完了は2028年4月が目標でした。
それからは公費解体の申請や、2社の銀行からの借り入れや使える補助金の確保、工事業者や設計事務所を探しに奔走。特に多くの建物が被災した能登では、工事や設計に関わる業者探しに苦労し、準備には時間がかかったそうです。
そして、今年3月に解体工事を開始。
「町からは『とにかく年度末(3月)までに着工してくれ』と言われてました。3月は、ようやく新しい店舗を建てる建築会社が決定したところだったんです」
「工事を1年後に延ばしてくれと言われ、その理由が…」
3月から2カ月かけて店舗の1/4の解体を終え、そこに5月から新しい店舗の建設に着工する予定でしたが、予想もしない事態が発生。
「建築会社が公共事業優先になって、店舗の工事を1年後に延ばしてくれって言われたんですよ。残った店舗の解体は12月の予定だったんですけど、工事の延期で新しい建物が建つ前に壊してしまうことになったんですよ。更地になるわけじゃないですか」
当初の予定が大幅に変わってしまったため、町には残った部分の解体を新しい建物が建った後にしてほしいと交渉。現在は残った3/4の状態になった店舗で営業を続けています。
「商品を陳列する棚で、残った店舗に入りきらなかったものは志賀町に倉庫を借りて置いています。倉庫代は工事の期間が長くなるほどかさみます」
解体したところに来年新しい店舗を建てるのに約1年、3/4の店舗を壊すのに5カ月、そこに新しい店舗を建てるのには2年程度かかるといいます。建て替えの途中で、仮店舗を建てたり、倉庫のような建物を借りて仮店舗とすることも考えているそうです。
「原材料が高くなるし、人件費も高くなるし、人手不足だし……」と、不安は尽きないようです。
「なりわい補助金」活用も「これは僕の代で終わらないなと」
店舗の立て直しには当初25億円ほどの建築費がかかると想定し、銀行からの借り入れだけでなく、「石川県なりわい再建支援補助金」(以下、なりわい補助金)も活用することに。
なりわい補助金では、令和6年能登半島地震と同年の奥能登豪雨の被害を受けた、石川県内に事業所がある中小企業・小規模事業者等の工場・店舗などの施設や生産機械などの設備の復旧にかかる費用の3/4(中堅企業は1/2)、上限15億円までが補助されます(石川県ホームページ「石川県なりわい再建支援補助金」より)。
「例えば20億円の費用に対して15億円の補助。すごい大きいよね、と思うけど5億は借金ですからね」
さらに、建て直しだけで想定より5億円以上追加でかかる可能性があり、レジや冷蔵庫など設備にも費用がかかるため、最終的にいくらまで膨らむかわからないと言います。
さらに、こんな課題も。「なりわい補助金を使うと、30年間は営業を続けないといけないんですよ。これは僕の代で終わらないなと」
補助金で復旧させた施設や設備は、一定期間、申請した通りに使用しなければならず、別の目的で使ったり、譲渡や取り壊しなどを行うと、補助金相当分を返納する必要が。期間は鉄筋コンクリートの工場なら38年、食料品製造業用設備なら10年など施設や設備により異なります。
「個人の家跡は、更地ばかりになってます」
地域の復興の進み具合について感じることをたずねると、谷内さんは次のように語ってくれました。
「昨年の10月で公費解体が終わり、ほぼ解体されたんですよ、個人の家は。でも、そこに家が建ってない。更地ばかりになってますね」
地震により志賀町を含む能登の人口減少は加速。建築費の高騰も原因の1つだと言われています。
「今、この辺では坪100万~150万かな(2026年4月時点)。それなら金沢でアパート借りた方がコストかからないですよね」
人口の減少は地元の人を相手とする小売店にとって大きな痛手に。値上げしようにも、商品に転嫁するとお客さんが離れてしまうため、再建に掛かった費用の回収は困難だと言います。また、人口減少は人手不足にも。
「うちの平均年齢も50歳くらいになってますけど、次、新しく雇用があるのかどうか。人手不足対策にはさらなる設備投資をしなければいけない」
地域の商工会に入っている谷内さんは、工場の経営者などからも同様の悩みを聞いているそう。ロッキーだけではなく、能登の地域や産業に共通する可能性もあります。
「企業を誘致するとか、何か地域に人を呼ぶような策をやってもらえればいいのだけれども……」
先が見えない状況で、「不安だらけやけども、やるしかないでしょう。状況がいい風に変わってもらわないとな、と思ってはいますけどね。がんばる、しかないと思います」と谷内さん。
改装工事についての動画に「なくてはならないお店」などの声があったように、地域の人から日常の買い物をする場としても、そして職場としても必要とされ続けることが、ローカルなお店が存続できるか否かの命運を握っていると言えそうです。
■ホームセンター ロッキー 公式ホームページ https://rocky1.jp/
■ホームセンターロッキー ニコニコ隊長Instagramアカウント https://www.instagram.com/rocky_niconicotai/