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元通りになるのか…バラバラに壊れた祭りの“主役”  元通りになった姿に歓喜の声…人との縁で修復実現

谷町 邦子 谷町 邦子

「お神輿が帰ってきた!」

地震で「修復不可」ではないかと思われたお神輿が、7月30日に元通りの姿で本来の場所「若宮八幡宮」(石川県輪島市)へ。8月17日・18日に開催される『黒島天領祭』で2年ぶりに巡行します。

令和6年能登半島地震で大きな被害を受け、保管する建物ごとお神輿が崩れて、最も小さい部材が約2センチ角に。そんな姿を地元の人々は知っていただけに、31日におこなわれた神事「若宮八幡宮 神輿復興祭」では、驚きと喜びの声に包まれました。

黒島区長の川井さんは、修復に携わった人々への感謝とともに「神輿が帰ってきて町に元気が出て、祭りにたくさんの人が来ると期待しています」と思いを語りました。

お神輿への思い、修復の経緯について取材しました。

「壊れたということも忘れるくらい」

お神輿と曳山が巡行する『黒島天領祭』。昨年は曳山巡行のみとあって、待ちに待ったお神輿とのお祭りが実現します。

奉納太鼓を披露した天領太鼓保存会会長の中町さんは、「初めて崩れてしまったお神輿を見た時は『直るのかな』と思ったけど、昔から見ていたお神輿が帰ってきた」。

ゲストハウス黒島を運営する「湊」の代表、杉野さんは「壊れたということも忘れるくらい、元通りの神輿だった」。

東京の大学を休学し昨年10月から黒島に滞在、中町さんから天領太鼓を習っている飛川さんは「どれだけ歴史があって立派なものか黒島町の人から聞いていたが、ついに見られた。迫力と繊細さを感じました」。

現地で取材し、いかに町の人々が心配しており、修復した姿を見て安堵し感動したかが伝わってきました。

この光景は、思わぬ縁と並々ならぬ努力、技術力が実現してくれたものでした。

「新しいものでは神輿の文化が途絶えてしまう」

姫路と能登…まったく接点がないように思えますが、つながりを作ったのは「不徹寺」(姫路市網干)に集う女性たちが立ち上げた「黒島支援隊」。

メンバーらは、支援をする中で地元の人々から、黒島町の人たちが姫路の人たちと同じくお祭り好きなことを耳にしたのがきっかけでした。

黒島支援隊の代表・稲垣さんは、「自分たちの町ってこんなに素晴らしい神輿があるんだ」と魅力を再認識し、復興に希望が持てるようになればという思いに。気持ちを同じくした不徹寺の住職、松山さんが宮大工に打診して修復を依頼。

その宮大工というのが、社寺建築や和風建築、屋台(曳山)などを手掛ける「福喜建設」の福田棟梁でした。

「お神輿が280年くらい歴史があると聞き、新しいものを作っても神輿の文化はそこで途絶えてしまうと思いました。祭り文化を技術で支えている自分たちにとっては、起こってはならないこと。だから大変でも『まいった』とは言えない」(福田棟梁)

昨年6月から今年2月まで、約8カ月…時に胃が痛くなるほど作業は困難を極めたと言います。もちろん設計図などはなく、地元の人が撮っていた写真をもとに、見比べながら部材をより分けて手探り。足りない部材も設計してひとつひとつ手作りし、元の姿にできるだけ近づけるよう細心の注意が払われました。

福田棟梁への橋渡しをした松山さんも、「生まれ故郷の福岡、お寺のある姫路、そして、黒島町。どこもお祭り好きの地域で、お祭りのことになると理屈抜きで熱がこもります」と、お祭りへの強い気持ちがあったようです。

そうしてようやく修復を終えたお神輿は5月13日から6月1日まで兵庫県立歴史博物館(姫路市)のロビーにて展示。一旦、福喜建設で保管された後、7月30日に黒島町へ運ばれました。運搬費用は石川県の補助金などもある中、黒島町の人々で負担。8月17・18日までは、曳山の倉庫に保管されています。

発災当初から姫路と黒島を月2回行き来していた黒島支援隊の代表の稲垣さんは町の変化について語ります。

「神輿の修復を機に、昨年は曳山保存の巡航をしようというお話に。今年度は神輿の修復が完了して、本当の祭りができると機運が盛り上がっているように思います」

「今後も細く長く地域に関わる仕組みに」

近年、多くの地域で祭りの担い手不足が課題となり、他の地域の人にボランティアを募るケースもありますが、黒島町ではこんな試みも。

「今まで関わってくださった災害ボランティアの方々の中で『ぜひお手伝いしたい』という方々にお声かけして曳山や神輿を担いでもらいます。一過性のボランティアとしてではなく、今後も細く長く地域に関わり続けてもらえるような仕組みを目指しています」

黒島支援隊は『黒島天領祭』に向けて、子どもたちが衣装を着て町を練り歩く「子供やっこふり」を復活させるための拠点づくりを8月9日から開始。稲垣さんは「食料品や祭り運営のための飲み物などのご寄付をお待ちしています」と協力を呼びかけています。

■黒島支援隊Instagramアカウント https://www.instagram.com/kuroshima_shientai/
■臨済宗妙心寺派 松壽山不徹寺Xアカウント https://x.com/futetsuji
■輪島市観光情報ポータルサイト「輪島たび結び」より「黒島天領祭」紹介ページ https://wajimanavi.jp/tourism/portfolio/kuroshima/

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