「助けられない状態で運ばれてくる猫」
そもそも、人への感染リスクが高い「SFTS」に警鐘を鳴らす以前から、獣医師たちは口々に「猫を外に出さないで」と訴えている。
ゆん先生によると、そこには大きな理由があるという。
「私たち獣医師が猫を外に出さないでと伝えるのは、猫の行動を制限したいからではありません。外での事故や病気で苦しむ猫を何度も見ているからです。助けられた命もあれば、どうしても助けられなかった命もあります。
代表的なのは『交通事故』です。骨折や内臓損傷、脊椎損傷など重いケガで運ばれてくる子もいますし、そのまま亡くなってしまうケースもあります。他にも、猫同士の喧嘩による咬み傷や膿瘍、猫エイズ・猫白血病など感染症のリスク、ノミ・マダニ・寄生虫感染、毒物や毒餌の誤食、虐待被害、迷子になって帰れなくなるケースなど、外には室内では避けられる危険が本当にたくさんあります。
よく、『外に出た方が猫は幸せ』『自由にさせてあげたい』と言う方がいます。気持ちはわかります。猫本来の習性を考えると、外で木に登ったり獲物を探したり、さまざまな刺激に触れる生活は自然に見えるかもしれません。
ただ、その“自然な環境”には、現代では交通事故や感染症、人とのトラブルなど、昔よりはるかに多くの危険が含まれています。室内でも猫の本能や欲求を満たす工夫は十分可能です。例えば、キャットタワーや棚で上下運動できる環境を作る、じゃらし遊びや知育トイで狩りを模した遊びを取り入れる、隠れ場所や日向ぼっこスペースを用意するなど、猫らしく過ごせる住環境は整えられます。
今の時代、猫にとって安全で長く穏やかに暮らせる環境は、完全室内飼育だと思います。室内でも遊び、運動、刺激、安心できる居場所は十分つくれます。『猫を外に出さないのはかわいそう』ではなく、『猫を危険から守るために外に出さない』という考え方がもっと広がってほしいと思います」(ゆん獣医師さん)
今年は「マダニ」の診察が増加の傾向
SFTSは「マダニ」を媒介とする危険な感染症。ゆん先生によると、今年はとくに「マダニ」の被害を受けた犬や猫を多く診察している印象があるという。
「マダニの増加が近年の気候などの影響かどうかは不明なのですが、SFTSの報道によって飼い主様方の意識が高くなってることが関係しているかもしれません。それならばなおさら、予防をしっかりとして、『猫は外に出さない』を徹底してほしいところです」(ゆん獣医師さん)