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寝転んでスマホ……急に片目が見えず、15分後に復活 実は、深刻な「病気」のサインかも【眼科医が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

40代の会社員Aさんは、就寝時には消灯した後も、ベッドで身体の左側が下になるような姿勢になりながら右目でスマホを眺めるのが日課です。しかしある夜、ふとトイレに起きようとすると、スマホを見ていた右目の視界だけが真っ暗で何も見えなくなっていました。

「もしかして失明した…!?」と焦ったAさんですが、15分ほどで視界は元通りに。翌日Aさんは自身に起きた事が何だったのかネットで調べてみると、暗い場所で片目だけでスマホを見ていたときに一時的に起こる『一過性スマホ盲』が酷似していることが分かります。そのため「なんだ一時的なものなんだ」と、すっかり安心して今日も同じように暗い部屋でスマホを眺めるのでした。

しかしこの一時的な片目の視力喪失は、とくに中高年の場合は重大な病気のサインである恐れもあります。ただのスマホ疲れだと楽観視してはいけない理由と、その裏に潜む本当の危機について、さいたま市大宮のくらかず眼科院長・倉員敏明さんに話を聞きました。

一時的な片目の視力喪失は脳梗塞の前触れの可能性も

――そもそもなぜ暗い部屋で横向きにスマホを見ると、片目だけ一時的に見えなくなるのでしょうか。

『一過性スマホ盲』と呼ばれるこの現象は、暗い環境で左右の目が見ている光の明るさが大きくずれる時に生じます。スマートフォンを見ていた目は明るさに慣れ、もう一方の目は枕などで覆われて暗さに慣れています。その状態で両目を開けると、明るさに慣れている方の目が暗さに対応できず、一時的に見えにくくなるのです。

この場合、数分から十数分で自然に回復することがほとんどです。一過性スマホ盲は、目の病気ではなく「見え方のズレ=視覚の順応」に起因する現象で、病気ではありません。特に若い人に多く、毎回似たような状況で起こるのが特徴です。

――一時的な失明を、「スマホのせい」と決して楽観視してはいけない理由を教えてください。

同じように片目が突然見えなくなる症状でも、中高年ではまったく別の意味を持つことがあります。それが『アマウローシス・フギャックス(一過性黒内障)』と呼ばれる状態です。

これは目の血流が一時的に低下することで起こるもので、いわば「目の脳梗塞の前触れ」ともいえる重要なサインです。数分で回復する点は一過性スマホ盲と似ていますが、原因は血管のトラブルであり、放置すると脳梗塞など重大な病気につながる可能性があります。

――一過性スマホ盲と、脳梗塞の前触れである状態を見極めるポイントがあれば教えてください。

たとえばスマートフォンを見ていないときに起こった場合や、明るい場所で発症した場合、枕に押し付けていた方の目に起こった場合などは要注意です。また、高血圧や糖尿病がある方、50歳以上の方は、たとえ一度きりでも軽く考えず、必ず医療機関を受診してください。

――スマートフォンの長時間使用や、暗い部屋での操作は、失明を引き起こすリスクはあるのでしょうか?

スマートフォンそのものが直接失明を引き起こすという科学的な証拠は、現時点ではありません。ただ、スマートフォンを長時間見続けることで眼圧がわずかに上昇することは知られており、特に暗い場所での使用ではその傾向がやや強くなるとされています。ただし、この変化は一時的なもので、使用をやめれば元に戻ると考えられています。緑内障治療中の方などは要注意です。

――一過性スマホ盲の対策や、重大な病気のサインを見逃さないために、大切なポイントを教えてください。

一過性スマホ盲は、姿勢そのものが問題というより「暗い場所で片目だけを使う」という条件が重なることで起きる現象です。そのため、暗い部屋ではスマートフォンを使わない、横向きで片目だけ見る習慣を避ける、できれば部屋の明かりをつけて両目で見る。こうしたちょっとした工夫で防ぐことができます。

また、片目が突然見えなくなるという症状は、若い人ではスマートフォンによる一時的な現象のことが多い一方で、中高年では血管の病気のサインである可能性があります。

「スマホのせいだろう」と決めつけてしまうことが、最も危険です。少しでも違和感があれば、ためらわず眼科を受診してください。その一歩が、将来の視力や命を守ることにつながります。

◆倉員敏明(くらかず・としあき) さいたま市大宮・医療法人創光会くらかず眼科院長
愛媛大学医学部卒業。手術特化の眼科として、複数の眼科医によるチーム医療体制で2,200名以上の手術を行う(2025年)。手術器具・手術方法の開発や眼内レンズの研究にも取り組んでいる。
▽医療法人創光会くらかず眼科ホームページ
https://kurakazu.org

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