およそ2人に1人ががんと診断される時代。安心を買うために、民間のがん保険に加入している人は、およそ4割とされます。
「がん保険に加入していた人が、がんで亡くなったのに、死亡診断書の死因が『多臓器不全』と記載されていたため、保険金が下りないと言われた」という投稿が、SNSで話題になりました。この投稿には「裁判したら勝てそう」「これだから保険は嫌いだ」という非難や「がんが原因なら、どこかに記載されるから出ないのは有り得ない」「約款次第だけど今どきのがん保険なら、こんなことはないんじゃない」という懐疑など、さまざまな意見が飛び交っています。
では実際に、がん保険を頼りにしていたのに、保険金が支払われないケースはあるのでしょうか。がん保険を取り扱ってきたファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。
支払いを断られた場合でも、すぐに諦める必要はありません
ー がんが原因で亡くなった場合でも、絶対に保険金が出るとは限らないのでしょうか?
例えば、がんと診断された時点で支払われる「診断給付」などは、死因に左右されず支払われるのが一般的です。一方で、死亡した際に支払われる「死亡保険金」は、契約内容によって支払い条件が異なります。
死亡保険金付きのがん保険では、多くの商品で「がんを直接の原因とする死亡」であることが支払い条件とされています。そのため、死亡診断書に記載される死因は、重要な判断材料になります。
ただし、直接死因が「多臓器不全」や「肺炎」と記載されていたからといって、それだけで直ちに支払い対象外になるわけではありません。がんが進行した結果として多臓器不全に至った場合など、がんとの医学的な因果関係が認められれば、給付対象となる可能性があります。一方で、契約内容や医療記録、病状の経過などを踏まえ、「がんを直接の原因とする死亡」には該当しないと判断されることもあります。
SNS上では情報が一部のみ切り取られているため、死因が「多臓器不全」と書かれていたという事実だけで、一般的な給付可否を判断することはできません。
実例として過去には、肝臓がんの患者が亡くなった際、死亡診断書に記載された直接死因が「肺炎」とされ、死亡保険金の支払いをめぐって保険会社と遺族が争ったケースもありました。こうしたケースも起こり得るため、自分の契約でどのような場合に支払い対象となるのかを確認しておくことが大切です。
―自分の保険の内容は、どうやって確認すればよいのでしょうか?
まず確認すべきは、保険証券の「保障内容」と「特約の内訳」です。そもそも死亡給付が付いているのか、ついている場合は支払い条件がどう定められているのかを確認します。
あわせて、約款の「死亡給付」「給付条件」「がんを直接原因とする場合」といった条文を確認しましょう。文言が分かりにくい場合は自己判断せず、保険会社に問い合わせることが大切です。その際は「死亡給付の支払条件」「直接の死因の扱い」など、具体的に質問すると確認がスムーズに進みます。
ー保険金が支払われないと言われた場合、どう対応したらいいのでしょうか?
支払いを断られた場合でも、すぐに諦める必要はありません。まずは不払いの理由を確認し、どの約款条項に基づいて対象外と判断されたのかを調べます。
次に、死亡診断書の内容を確認しましょう。がんが原疾患であり、その結果として多臓器不全などに至った場合には、医師に経過についての補足説明を依頼できるケースもあります。
それでも判断が覆らなかった場合は、保険会社に異議申し立てをすることが可能です。さらに、生命保険協会の裁定審査会など外部の紛争解決機関に相談する方法もあるので、活用すると良いでしょう。
がん保険は入っているから安心ではなく、内容を理解しておくことが重要です。万一のときに慌てないためにも、今のうちに自身の保障内容を確認し、分からない点があれば保険会社に確認しておきましょう。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) ファイナンシャルプランナー
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行を行う。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。