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あわや生態系の危機!本土から1000km離れた父島に迷い込んだ"レース鳩"…いったいどうやって?

中将 タカノリ 中将 タカノリ

本土から約1000km離れた小笠原諸島・父島に迷い込んでしまった"迷い鳩"がSNS上で大きな注目を集めている。

「【WANTED】
本日3/19、おがさわら丸の父島入港時に
『無賃乗船したレース鳩』と思われるハトが目撃されています。
出発地へ帰還してもらうべく、島民・観光客の皆様からの目撃情報を集めております。
ハトを見かけた方は、レスキューダイヤルまでご連絡ください」

とその模様を紹介したのは小笠原自然文化研究所のXアカウント(@iBo_sznbnk)。

レース鳩は、どうやら東京港竹芝と父島二見港間の定期運航するおがさわら丸に乗ってやってきたらしい。その後、無事に捕獲されたようだが、果たしてどんないきさつがあったのだろうか?

小笠原自然文化研究所の鈴木創さんにお話を聞いた。

ーー捕獲までの経緯は?

鈴木:3月19日の11時、父島二見港湾施設内で鳩が目撃されました。私たちは普段から島の自然の調査や鳥の保護等もしているので、港ですぐに話を聞きました。

入港の人混みが去って落ち着いてから静かに捕獲しようと考えていましたが、接近しすぎた人がいたようで、鳩が飛び去ってしまいました。

そこでやむなく「WANTED」を僕たちの研究所のSNSで発信し、長期戦を覚悟してリアルタイムの目撃情報を集め始めました。

なかなか見つからないだろうから、数日経てばお腹が減って弱ってから集落地に再飛来するかもしれないので、そのタイミングを待とうと思っていました。

Xの担当者から 「レース鳩がバズっている!???」と聞いたのは投稿の翌日でした。まったく予想していなかったので、正直こちらが「ハトが豆鉄砲くらった」状態になりました。しかしこのバズりのお陰で、続々と父島内での目撃情報が寄せられ、3月20日14時半頃に、島内の小笠原高校の付近で無事確保できました。とっさの手づかみでした。 

ーーなぜこのハトがおがさわら丸に乗ってやってきたとわかったのでしょうか?

鈴木:週1回程度のおがさわら丸の入港と同時に、このハトがまあまあ元気で港に出現したこと、そして小笠原に生息していないカワラバトだったことです。

カワラバト(※レース鳩に用いられる品種やドバトの生物種名)の飛来は過去にも例がありますが、船に乗ってきたと考えられる場合と、低気圧等に巻き込まれたと考えられる場合があります。前者は港か港の近くで、入港日か翌日に見つかります。また鳥は比較的元気です。後者は場所と時間を選ばず、また羽根も痛んで激ヤセとなっていることが多いです。

また小笠原諸島は本土から1000キロ以上離れた大海原にゼロスタートで誕生した海底火山起源の海洋島。人間の入植以前は、四つ足哺乳類やヘビ、カエルなどの両生類、ドングリ類の樹木はない島でした。鳥に関して言えば、本土に分布するドバトも、キジバトも、スズメも、トンビなどはおらず、かわりに、アカガシラカラスバトなど世界でここにしかいない鳥が生息しています。なのでカワラバトがいれば一目瞭然で島外から来たことがわかるのです。なので「どうも脚環が着いてたぞ」と聞き、すぐ「レース鳩じゃないの?」結びつきました。

ーー内地から来た鳩を放置すると悪影響があるのでしょうか?

鈴木:天然記念物で絶滅危惧鳥でもあるアカガシラカラスバトは、カワラバトとは大きな意味で親戚筋にあたります。理論上は交雑できる種です。また1000キロ隔てた小笠原と内地では、動物が抱えていたり共生している菌類等も異なる可能性があります。

このようなことから島外から生物が入るのは、島の生物、自然にとって大きなリスクになる可能性が高いのです。特にレース鳩は明治期に外国人が日本に持ち込んだ生物であり、かつ人為的に放された鳥です。このようなことからレース鳩は 小笠原にとって来島歓迎とはいかない存在なのです。 

ーー捕獲した鳩のその後は?

鈴木:捕獲後に、脚環に記されている電話番号から神奈川県在住の飼い主さんに連絡がつきました。事情を説明すると快く鳥の引き取りと港での受け取りを了承いただけたので、保護翌日に出航するおがさわら丸に乗せました。

一度コースアウトした鳩はレース出場させられなくなり、少し立場が悪くなる場合もあるそうです。でも小笠原まで行って帰ってきた鳩の場合、その体力と強運にあやかって大切にされているケースも多いようです。丁寧で責任感のある飼い主さんでしたし、多くの人の連携プレーで捕獲、帰還できたラッキーな鳩なので、これからも大切に飼っていただきたいと願っています。

ーー投稿への反響について。

鈴木:レース鳩が小笠原の生態系に与える影響について心配する声が多かったことに驚きました。カワラバトやキジバトが、小笠原へ自然に渡ってくることは時々ありますが、人間に飼育されているレース鳩は、島には無い病気などを持ち込んでしまうリスクが高いため、早急に捕獲して持ち主の元へ送り返す必要がありました。投稿の反響が大きかったおかげで島民の方々からの目撃情報がタイムリーに届き、速やかな捕獲に繋がりました。

小笠原諸島にはアカガシラカラスバトの他にも、オガサワラカワラヒワ・オガサワラオオコウモリなどの絶滅危惧種が多く生息しており、これらの野生動物の保全や傷病個体の保護を行なうことが当研究所の主な活動です。今回の投稿を通して、長い時間をかけてつちかわれた小笠原諸島の自然に興味を持っていただけたらうれしいです。

◇ ◇

SNSユーザー達から
「無賃乗船のレース鳩…想像すると可愛すぎます 」
「休めると思ったが、帰るのが大変になった 」
「ちょっとコミカルな話っぽいけどこういう"たった1匹"で生態系が崩れていくんだろうなあ… 飼ってるなら責任持って管理してほしいわ」

など数々の驚きの声が寄せられた今回の投稿。

往復2000kmのはるかな旅を終えたこの鳩が、今後は安心安全に暮らしてくれることを願いたい。

小笠原自然文化研究所関連情報
Xアカウント:https://x.com/iBo_sznbnk/
ネコ保護に関する取り組み:https://www.ogasawaraneko.jp/
オガヒワに関する取り組み:https://ogasawara-kawarahiwa.jimdofree.com/

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