東京都内の用水路に「巨大金魚がいる」という噂を聞きつけ、実際に調査に乗り出した様子を収めた動画がYouTubeで注目されています。投稿したのは、珍しい生き物や深海魚、外来種を捕獲する活動を発信しているYouTubeチャンネル「あらかわちゃんねる」のあらかわさん(@Arakawa455)。動画には、野生にいることはあり得ない真っ赤な外来魚「パロットファイヤーシクリッド」を自ら捕獲するシーンが映し出され、多くの反響が寄せられました。
用水路に巨大金魚!?情報提供を受けて現地へ
あらかわさんが外来種などを捕獲する活動を始めたきっかけの原点は、小学生のころだったといいます。もともと近所の川で泥をかき回してドジョウやザリガニを捕るのが大好きで、高学年になると「ザリガニはアメリカから来た外来種なんだ。じゃあ、なんでここにいるんだろう?」と考えるなど、どんどん興味が広がっていったそう。
「いつの間にか、『この生き物はなぜここに来たんだろう』『外来種問題って何だろう』『今、“生き物が減っている”と言われるのはどういうことなんだろう』と考えるようになりました。そうして『自分の中だけで完結させるのではなく、YouTubeなどを通して多くの人にも知ってもらいたい』と思うようになり、活動を始めたんです」
今回の調査のきっかけは、あらかわさんのもとに届いた1件のDMでした。TikTokのDMで視聴者から「20cm〜30cmほどの巨大な金魚が用水路を泳いでいる」と連絡が届いたといいます。
「20cmを超えるような金魚の仲間って、基本的にはあまりいないんです。本当に大きく成長してしまった金魚なのか、それとも全く別の種類の熱帯魚なのか。調査に向かうまでは半々くらいの気持ちでいました」
あらかわさんは「ガサガサ」という、主にタモ網を使って川や水辺にいる生き物を捕まえる方法で調査を開始。しかし、昼間の調査で見つかったのは“グッピー”ばかり。しかも野生とは思えないほど状態の良いグッピーが次々と見つかったことから、「グッピーの天敵が“ほぼ皆無”みたいな状況じゃないと難しいと思う」と用水路の環境を予想していました。
この日は“巨大金魚”の捕獲には至りませんでしたが、別日の夜に改めて用水路を訪れると、突然赤い影が現れたといいます。
「用水路を覗きながら歩いていたら、本当に真っ赤な魚がスッと出てきたんです。金魚よりもさらに赤みが強かったので、『金魚じゃないな』と瞬時に思いました」
一度は逃げられたものの、約1時間後に姿を見せた瞬間を狙って捕獲に成功。「かなり警戒心が強く、物陰に隠れがちな魚でした」と振り返ります。
「捕まえた瞬間に熱帯魚の一種“シクリッド”の仲間だと分かったので、『なんでこんなに大きいシクリッドが日本の川に放されているんだ?どこから来たんだろう…』と驚きが大きかったです」
巨大金魚の正体は"いるはずのない魚"
捕獲されたのは“パロットファイヤーシクリッド”という、台湾で品種改良された際に生まれたシクリッド。熱帯地域の魚で、通常は水温の高い水槽で飼育される種類です。あらかわさんはこのパロットファイヤーシクリッドについて、「フラミンゴシクリッドとシンスピルムと呼ばれるシクリッドを交雑させた結果偶発的に生まれたもので、本来自然にはいない魚」と動画内で説明しています。
「沖縄では今回のパロットに近いシクリッドの仲間を何種類か見たことがありました。しかし、今回の用水路は特別に温かい水が流れているわけでもない、東京都内の一般的な用水路。『ここで長く生き残れるはずがないのに、なぜいるんだろう』と純粋に驚きました」
今回見つかった個体がなぜ用水路にいたのか―。あらかわさんは、この個体が“放流された可能性”を指摘します。
「今回のように見た目が珍しい、かつ日本にいるイメージがない魚は、ペットとして飼われたあと身近な川に放されてしまった可能性があります。こういったペットの放流問題については、もっと多くの人に知ってほしいです」
観賞魚の放流による影響
先述したように、あらかわさんは沖縄で、中南米に生息するフラミンゴシクリッドや、囚人服のような模様のコンビクトシクリッドなど、シクリッド種を多く発見しています。その経験から、シクリッドを川に放流することの危険性について、次のように話します。
「今回のパロットは定着する可能性は高くないと思いますが、もし同じような肉食魚を20〜30匹、あるいは50匹といった単位で放してしまうと、日本でも繁殖・定着する可能性があります。そうすると在来種を継続的に食べ、駆除しても根絶が難しくなるでしょう」
また、状況次第では「特定外来生物」に指定される可能性もあるといいます。
「特定外来生物に指定されると、すでに飼っている人は環境省からの許可が必要になるなど影響を受けますし、生態系への悪影響も大きくなる。そのあたりが一番の問題だと感じています」
動画を観た視聴者からも「これは酷いな」「捨てんなよ…」と驚きのコメントが相次いでいました。
捕獲された個体はアクアパーク川越へ
今回捕獲したパロットファイヤーシクリッドは、動物園や水族館などを運営する「アクアパーク川越」に引き取られることに。
「『アクアパーク川越』は、以前から保護や外来種問題の発信の一環として、捕獲した生物を引き取ると言ってくださっていました。引き取り先については、なるべく個人ではなく施設にお願いするようにしています。個人の方にお渡しすると、その方が飼いきれなくなって逃がしてしまう可能性もゼロではないからです」
今回のパロットは現在、アクアパーク川越の5階・お風呂コーナーで展示されているそう。
今回の動画を公開した後は、視聴者から届いた多くのコメントに影響力の大きさを感じたといいます。
「動画を見てくださったことで川に目を向ける方が増えたり、『変な魚がいたら連絡してみよう』と思ったりしてくださる方が増えていると感じます。連絡をいただければ捕まえて保護することもできますし、捨てられて死んでしまうペットを1匹でも減らすことができる。少しずつですが、活動の効果は出てきているのかなと思っています」
「あらかわちゃんねる」としての今後の目標は2つ。1つ目は、日本各地で起きている外来種の問題や在来種の減少など、さまざまな環境問題をリアルな姿で伝えていくこと。2つ目は、海外の外来生物問題にも目を向けていくことだといいます。
「日本で数百円~千円程度で買える熱帯魚の多くは、実は東南アジアなどで養殖されたものなんです。その過程で、洪水などをきっかけに養殖場から逃げ出してしまい、新たな外来種問題が生まれているケースもあります。一見すると日本は関わっていないように思えるかもしれませんが、日本向けの熱帯魚需要が間接的に海外の外来種問題につながっている面もある。そうした海外の状況についても、今後は取り上げていきたいと思っています」