「民泊はじめて5年経つけど、洗い物そのままで帰られたの今回が初めて」
宿泊客の行いを嘆く民泊オーナーのSNS上の投稿が話題となっています。民泊は増加傾向(※)にあるものの、初めての場合は戸惑う人もいることでしょう。そこで、利用する際のマナーについて取材しました。
使用済みの器やコップ、フライパンなどがシンクに雑に入れられた状態の写真とともにSNSに投稿したのは、四国で古民家の民泊を経営するハリー(仮名)さん。宿泊したのは、日本人の大学生のグループ。食器は洗わず、玄関も閉めずに出ていったそうです。
この投稿へは、
・教育の大切さを改めて感じる
・お金払っているんだからいいでしょって思ってそう
・「来た時よりも美しく」って習わなかったのか
と、Aさんに共感し、憤る人もいる一方で、
・ルールを明記していなかったからでは?
・客に自分の常識を当てはめてはいけない
・洗い物をするのも仕事。お客さんにする義務はない
などの声もありました。
多くの声を受け、スタッフが食器類や調理器具を洗うことを説明。その上で、食器の片づけについて、「『次の人やスタッフが少し楽になるかな』って考えるのは、普通じゃないのかな」と、疑問を抱いたための投稿でした。
しかし、寄せられたコメントからは、そのような常識が必ずしも共有されているわけではないことがうかがえます。
自由に食器や調理器具を使えて、多くの人と備品や施設を共有する民泊。今回の件を受けてお話を聞きました。
「約9割のお客様が使用した食器を洗う」
共感とともに反発も多かった投稿の後、ハリーさんが経営する別の店舗について、Googleの口コミに意図的な嫌がらせと思えるコメントが続出。そのため匿名を条件に、「対立や批判ではなく、社会の中での気づきや対話のエピソードとして伝わればうれしい」と取材に協力してくれました。
「今回のケースは珍しい事例でした。約9割のお客様が使用した食器を洗うなど、きれいに片付けてからチェックアウトしてくださっています」
まず、ハリーさんの民泊施設でのルールを教えてもらいました。
「当施設では基本的に、『使用した食器は洗っていただく』というお願いをキッチン内に掲示しています。
具体的には
・使用した食器や調理器具を洗う
・シンク周りを軽く流す
・洗った食器は水切りカゴに置く
この状態までしていただけると、清掃スタッフとしては大変助かります」
民泊としては、ごく一般的と思われるルール内容です。
「洗い残しの確認をスタッフ側で行うことが多く、食器を水切りカゴに置いていただく形で問題ありません」と、食器棚に片付ける必要はないといいます。
外国人観光客については、「うちに泊まりに来てくれる方々は日本の文化や歴史を愛してるようで、古い物でも本当に綺麗に使ってくれます」とのこと。これまでは、日本人学生グループの方が、雑に扱っていると感じることが多かったそうです。
「宿泊施設として細かな規則というよりも『次に利用する人への配慮』という形でご案内」していましたが、今回の出来事を受けて、「キッチン利用後の片付け」に関しては、より具体的な言葉で掲示するようになったと言います。
「洗いきれない食器」「残った料理」はどうする?
しかし、チェックアウトまでに食器洗いが間に合わなかったり、作った料理を食べきれなかったりという事態もありえます。そのときの対応について、ハリーさんの意見を伺いました。
ハリーさんが宿泊者の立場であれば、
・洗いきれない食器はシンクにまとめておく
・残った料理は可燃ごみとして処分する
・余った食材などは持ち帰る
・メモなどで状況を一言伝える
という形で対処しようと考えるとのこと。
「完全に元通りにすることよりも、次に使う人や清掃する人が困らない状態にしておくことが大切ではないかと思います。
ルールの考え方は一棟貸しの民泊か、複数のグループが共用で利用する施設かによっても変わるのではないでかと。共用スペースがある宿泊施設では、より利用者同士の配慮が重要になると考えています」
共有スペースがある民泊施設であれば、台所だけでなく、トイレ、お風呂、玄関など、利用方法によっては、ほかの客に迷惑がかかってしまいます。ホテルや旅館よりも金額的に安価であったり、通常の宿と異なる経験ができる民泊だからこそ、常識・思いやりなどが問われるのではないでしょうか
今後のため、マナーを伝えていく大事さ
今回の件については、トラブルにつながらなかったため連絡はせず、そのままに。ただ、深夜2時に騒音トラブルを起こした学生たちに注意したことはあったそうです。
学生たちは教育関係の仕事を志望していたことから、「『もう二度と来ない場所』だから好き勝手にしてしまうのか」「知り合いの家ではしないことを、なぜ宿ではしてしまうのか」と、常識やマナーなどについて話し合ったとのこと。
学生はチェックアウト後に、深夜に羽目を外したため近隣の方やゲストハウスの方に迷惑を掛けたことを改めてメールで謝罪。また、真摯に話してもらったことへの感謝とともに、社会人として恥ずかしくない行動をとっていきたいという思いを伝えてくれました。
ハリーさんは「私も若い頃、同じように真剣に教えてくれる大人に出会ったことで、今こうして人に伝えられるのだと思っています。これから社会に出て、たくさんの人と関わる機会があると思いますが、どうか自分らしく頑張ってください」とエールを送りました。
そのことを振り返り、「騒音トラブルという形ではありましたが、結果としてお互いにとって学びのある時間になったのではないかと感じています。民泊でも飲食店でも、人と人が関わる場所だからこそ生まれる学びや気づきがあるのではないかと思っております」。
◇ ◇
今回は鍵が開いたままという状況で、第三者による盗みや迷惑行為につながらなかったのは、運が良かったのかもしれません。ルールだからではなく、自分の行動がどんな迷惑につながるのか…と考えるきっかけになればという思いから取材に協力してくれたハリーさん。
「民泊はホテルとは少し違い、地域の家を借りて暮らすように泊まる宿泊スタイルです。多くのお客様が『来たときより少しきれいに』『借りたものは大切に使う』という気持ちで利用してくださっています。
今回の出来事をきっかけに、宿泊マナーや思いやりについて少しでも考えるきっかけになればうれしく思います」
(※1)令和8年1月15日時点における住宅宿泊事業の届出件数は59,427件(ただし、届け出件数のうち、事業廃止件数は21,315件)届出住宅数は令和7年11月よりも増加し、38,112件。民泊制度ポータルサイトより