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両親は宗教幹部…「金食い虫」「早く死ね」と罵られ殴られる日常 宗教2世が語る“虐待サバイバー”の生きづらさ

古川 諭香 古川 諭香

人には心を回復できる力がある――。そう話すのは、宗教2世の「さちんぬ」さん(sachinnu_manga)。幼少期から宗教の信仰を強制され、虐待を受けてきた彼女は若年性リウマチや離人症を抱えながらも、定時制高校を卒業。

現在は、漫画などを通して宗教2世や虐待サバイバーの生きづらさを伝えている。

暴力とネグレクトが日常だった“宗教2世の幼少期“

さちんぬさんの両親や親族は、仏教系の宗教を信仰。両親は幹部だった。幼い頃には正座で長時間の読経を強いられ、宗教の新聞を配らされた。

暴言や暴力、食事を与えないというネグレクトは当たり前。空腹を満たすため、時々、友人宅で夕食を食べさせてもらうこともあった。

「親はお金を全部、宗教のために使いたい人。体調が悪くなっても、すぐ病院へ連れて行ってもらえませんでした」

若年性リウマチが発症した時は体育に参加できなくなり、親が世間体を気にしたため、ようやく病院を受診できた。

「金食い虫」「早く死んでくれないか」などと言われ、殴られるのが日常。外で寝るほうが安全に感じ、野宿をするようになった。

自分で稼いで定時制高校へ…高校の卒業式の日に上京

14歳の頃には、現実感が希薄になって自分が自分でないように感じる「離人症」を発症。宗教系の高校以外への進学は認めないという親の意向により、独学でこっそり勉強して合格した全日制の高校には行けなかった。

その後は中卒で働くも、将来を考え、夜間の定時制高校へ。スーパーや喫茶店で働き、学費を稼いだ。

「昼の仕事に加えて、深夜に運送会社の工場で働いていた時期もありました。リウマチの治療費や親から逃げるための上京資金も稼いでいました」

進学先の高校は、複雑な家庭環境の生徒が多かった。教師は生徒を子ども扱いせず、対等に接してくれたという。

「信じてもいい大人がいると初めて思えましたし、様々な事情がある同級生と関わる中で、自分とは違う苦しみを持つ人がいることも知りました」

高校生の頃には、親から宗教の試験を受けるように強要された。自分に宗教は必要ない。そう何度、訴えても聞き入れてもらえず。「お前がおかしい」と言われ続けると、「私が間違っているのでは…」という恐怖心が生まれた。

そこで、宗教が自分にとって必要なものか判断するため、徹底的に勉強。試験も受けた。

「合格しましたが、やはり自分には必要ないものだと感じました。どんな人がどんなものを信じるのも自由ですが、信じたくない人に強制はしないでほしい。宗教って本来は個人が持つ、人生を大切にするための指針だと思うから」

高校の卒業式で保護者席に座ってくれたのは、小学生の頃からの友人。さちんぬさんは卒業式を終えたその日に上京。清々しい気持ちで、事前に契約していたアパートでのひとり暮らしをスタートさせた。

研究職に携わり、“憎い自分の血“への捉え方が変わる

親と同じ遺伝子である自分の血が気持ち悪い。そうした嫌悪感を持っていたこともあり、上京後は研究職に就き、遺伝子研究に携わった。人間と遺伝子の配列が近しい虫の研究では親と同じ遺伝子を持つ子ばかりが生まれ、苦しさを感じたそうだ。

だが、研究を進める中で、親と同じではない遺伝子を持つ虫の子が生まれ、自分の血へ気持ちが変化。エビデンスとなるものを自分の目で見れたからこそ、「どんな人間から生まれたとしても人はオリジナリティの塊」と自己受容できるようになった。

ところが、平穏は長く続かない。住民基本台帳法により、親は子の住所を取得できるため、両親に居場所を知られてしまう。

それを機に閲覧制限をかけるようになったが、毎年の更新が必要。成育歴を毎年説明しなければならず、フラッシュバックで倒れてしまったこともある。

「両親が信仰していた宗教には信者のカルテのようなものがあり、そこから居場所を探られ、信者が自宅を訪ねてきて居場所がバレたこともあります」

居場所が知られるたびにシェルターへ避難したり、引っ越しをしたりしなければならないため、今でも心は休まらない。

開放病院への入院で“自分”を取り戻す

また、ひとり暮らしする中で気づいたのは、親元を離れるだけでは心の回復は難しいという事実。そこで、20代の頃、自ら希望して開放病棟に入院。薬の見直しや生い立ちを客観視する治療を行った。

「精神的にキツかったですが、自分の状態を正しく知ることは回復に繋がりました。そして、回復を心から望んで協力してくれる人がいることが私にとっては一番の治療になりました」

入院先では、生まれて初めてゆっくりお風呂に浸かることもできた。

「お金がかかると言われ、家では急かされながらのシャワーでした。学校は学費という対価があるから給食を食べていいと思っていたので、ご飯を食べるのに対価がいらないことにも驚きました」

“何気ない家族の話題”が突き刺さる虐待サバイバーの生きづらさを発信

虐待サバイバーとしての後遺症は、今もある。長時間睡眠を取らないと体力が回復しないため、フルタイム勤務は困難。人への恐怖心は完全に消えず、誰かと生活することは難しい。

一度、結婚を経験したが、ひとりの時間を確保できないと心身が不安定になることに気づき、離婚を選んだ。

それでも自身の体験を明かすのには、救えなかった友人がいたからだ。虐待サバイバーは、何気ない家族の話題でトラウマがフラッシュバックすることもある。友人は、“悪気のない家族の話”で心が追い詰められ、自死してしまった。

「私も父の日や母の日が近づくと苦しくなるし、年末年始に帰省の話を振られると辛い。家族の話題を出す人に悪気がないことは分かっているけれど、サバイバー体験は話せる人が限られるので、ひとりで悶々としてしまいます」

自分たちと同じような人は、山ほどいるはず。傷が少し癒えた虐待サバイバーが勇気を出して社会に出た時、再び傷を負わないようにするには、うつ病のように正しい認知を広めていくことが重要なのかもしれない。

そう思い、noteやSNSで自身の体験を発信するようになったのだ。

頑張ることや希望を持つことは素敵なことであると同時に、辛さにもなる。だから、心が無理しない範囲で自分の回復を信じてほしいと、さちんぬさんは同士にエールも送る。

「苦しい時は何も耳に入らないこともあるし、希望などの言葉がムカつくこともある。でも、幸せになりたいという気持ちが少しでもあるなら、自分の回復を信じることを諦めないでほしい」

そう話す自身も、回復途中。最近では、30年近く続いている離人感がほんの数秒だけ途切れたことがあり、感動した。

「治らない部分もあるかもしれないけれども、治っていく部分も人間にはたくさんあるんだと希望が持てました」

自身の回復を信じながら世の虐待サバイバーの回復を願う、さちんぬさん。その姿から私たちは、人が持つ強さとたくましさを学ぶ。

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