おじさんたちの哀愁は、ときに笑いを誘うこともあるようです。ヒロ・コトブキさんの『吐け!吐くんだオレ!』をはじめとする作品では、中年男性たちのさまざまな側面が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、あわせて約2.2万ものいいねが寄せられました。
とあるパーティ会場で、気分が悪くなり吐こうとする中年男性がいました。そこで男性の吐き気を促すためにも、女性が背中をさすります。しかし女性は、まったく彼を心配している様子がありません。彼女は今すぐにでも楽しいパーティに戻りたい、けれども『冷たい彼女』になるわけにもいかないと思っている様子です。
そこで彼女は、「魚のなんか…内臓んとこ」「風呂なしアパートの排水口」など気分がいっそう悪くなりそうな言葉をささやき、彼を早く吐かせようとするのでした。
違う物語では、ある中年男性が、妻の食事作りの様子を目撃するところから始まります。料理に使うのはエッグカッター、おろし金、ミキサーなど洗うのが大変な道具ばかり。思わず男性は「旅行とか外食とかいっぱい行こうね」と言うと、妻は動揺するのでした。
最後の作品では、とある中年上司が電話越しに説教をするシーンから始まります。説教を受ける彼は「ひえーすいません」と答えるも、ズルズルとなにかをすすっている様子です。その後、何かを取り出し火をつけ、食後の一服をする音が電話から聞こえてきました。
上司はもういちど彼を怒りましたが、「ひえーすいません」としゃべるばかり。その後電話先の彼は、タクシーで舞浜駅まで行き、叱られながら夢の国へ向かうのでした。
中年男性のさまざまな面を描いた作品たちについて、作者のヒロ・コトブキさんに話を聞きました。
作中の『みっともない人』『困った人』はぜんぶ自分がモチーフ
―作品や登場人物について、参考にした人やモデルはいるのでしょうか
僕は、とにかく『情けなさ』や『恥ずかしさ』みたいなものに潜む笑いが好きみたいです。そしてそれはいつも僕です。話のなかに出てくる『みっともない人』『困った人』はぜんぶ僕です。
あの時のあれや、その時のこんなことを、漫画にして追体験させて、笑いに昇華する。そして『恥ずかしかった自分』も成仏する。断定できる話ではないですが、なんとなく「そうなんじゃないかな」と思っています。転んでも転び方がおもろかったら作品になるよ。って言ってもらいたいんじゃないかなあ。
―作品のネタは、いつもどのようなときに思い浮かぶのでしょうか?
僕の場合、ネタを探して生活したり出かけたりということができないタイプみたいで、大体気がついたら猫を見て「猫だ」と思ったり、室外機を見て「室外機だ」と思ってるだけです。「作ろっかな」と机に座ってから考えるタイプです。
だけど結局その時作ったお話を(僕なりに)解剖してみると、一昨日食器洗いしながら考えたことが入っていたり、散歩の途中で見た誰かの何かが入っていたり、室外機が入っていたりします。あまりに小さくて自分では忘れていることなのに、ふと漫画に入ってきたりして「へぇ」と不思議な気持ちになります。
頭は瞬時に見て、不要と判断して次々に切り捨てていくのに、体の方だけが大事にとっといてくれているような...健気でかわいい(笑)。だから鉛筆を握って手を動かした時にその記憶たちとつながって出てきてくれるんだろうなと思います。
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