ある書店が、岩波文庫の出版社在庫ほぼ全点にあたる約2700点を揃えた大型売り場を展開し、SNSで大きな反響を呼んでいます。
投稿したのは、東京都稲城市の大型書店「コーチャンフォー若葉台店」公式アカウント(@cf_wakabadai)を運用する店員さん。「本気、出しました」と添えて公開された写真には、白・赤・青・黄・緑の背表紙が一面に並ぶ壮大な光景が広がり、本好きの間で「これは壮観」「覚悟がすごい」と称賛の声が相次ぎました。
今回の売り場では、岩波文庫に加え、岩波少年文庫やワイド版、大活字版まで含む岩波書店の文庫シリーズを出版社在庫ベースで揃えたといいます。
棚づくりは構想から発注、棚割り、陳列まで約2週間。チームで一気に作業を進め、「できる限り広いスペースを確保し、お客様にゆっくりご覧いただけるよう面での展開を増やしたことがこだわり」と店員さんは振り返ります。
2000坪という広い売り場を生かし、実物を一覧できる環境を整えたことで、本との新たな出会いを生み出したいという狙いもありました。実際に売り場を訪れた来店客からは、「一生ここにいたい」「夢のような景色だ」といった声も寄せられているといいます。
店員さんは、「ネット検索は目的の本にたどり着くには便利ですが、書店を歩く醍醐味は目的外の本との予期せぬ出会いにあります」と話します。
今回の取り組みの背景には、近年感じていた読書文化の変化がありました。「SNSやYouTubeによる読書文化の広がりによって、ここ1年ほどで読書への関心の高まりを強く感じていたことが大きなきっかけだった」といいます。
読書インフルエンサーによる発信や、SNS上で書籍紹介を行うプロジェクトの影響もあり、特定の大ヒット作だけでなく、紹介や推薦をきっかけに複数タイトルが売れる傾向が見えてきたことが、今回の全点展開につながりました。
書店として発信を通じて業界を盛り上げたいという思いに加え、「岩波文庫は時代を超えて読み継がれる普遍的な価値の象徴」という考えも、挑戦的な売り場づくりを後押ししたといいます。
同店では書籍のほか、文具雑貨や音楽、カフェ、カプセルトイ、駄菓子なども展開しています。「カフェやカプセルトイが日常の楽しさなら、この文庫棚は日常を深める知の聖域」と位置づけ、親子三世代が楽しめる空間づくりの中で知的な探求に向き合える場を目指しているといいます。
SNS投稿の反響は売り場にも明確な変化をもたらしました。投稿翌日から大型棚の前に来店客が集まり、写真撮影や背表紙を確認しながら本を探す姿が目立つようになったそうです。
売り上げも伸び、通常は平日1日5冊前後だった岩波文庫の販売数は、投稿翌日に約80冊、翌日も約70冊を記録。週末には150~170冊まで増加しました。
店員さんは「『すごい』『読みたい』『絶対行く』『書店に行きたい』といった声が多く寄せられ、業界全体の盛り上がりにつながっていることを嬉しく思いました」と話します。
今後については、「学術系や新書系レーベルの拡充も視野に入れながら、発信と売り場づくりをセットで続け、業界全体の活性化につなげていきたい」としており、「これからも多くのお客様のニーズに応えられる品揃えと発信を続けていきたい」としています。