「共働きなのだから、家事や育児は分担できているはず」——そう思われがちですが、現実は必ずしもそうではありません。
2歳のお子さんがいる、倉木ほのか(30代・仮名)さん。朝5時に起床し、我が子のお弁当や朝食を作る合間に、食器洗いや洗濯物、朝の準備などを終えた後には、子どもを保育園まで送迎。そうしているとあっという間に8時です。ようやく会社に出勤し、時短勤務で17時に仕事を終えたあと、18時までに保育園へお迎えに行かなければなりません。
そこから、1日の後半戦がスタートです。夕食の支度、子どもの入浴や寝かしつけ、洗濯や翌日の準備までをほぼ1人でこなしていきます。気づけば今日も、自分がすべて回した。そう感じる日が続いていると言います。
夫の仕事は残業が多く、朝のゴミ出しだけなど、家事にも満たないようなことしか手伝えません。仕方がないことは理解していても、「なぜ私だけがこんなに大変なのか」という疑問が消えないことがあります。家事や育児が「手伝い」という位置づけのままでは、指示を出す役割や段取りは常に妻側に残ってしまいます。
家事育児、その他の見えないタスクに気づくこと、判断すること、調整すること...。そうした見えない労働が積み重なり、ワンオペ状態が当たり前になってしまうのです。
共働き母親たちが抱える「見えない負担」
共働きで育児をしている母親たちの中には、倉木さんと同じような課題を抱えている人がたくさんいます。
仕事から帰宅しても休憩する暇はなく、夕食の準備や片付け、子どもの世話が次々と待っています。家にいるはずなのに、気持ちが休まる時間はほとんどありません。パートナーにはそのつらさを理解してもらえず、日々のすれ違いの中で夫婦の溝が深まっていくのです。
総務省の「社会生活基本調査」(2021)によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯では、妻の家事育児時間は1日平均約6時間33分、夫は約1時間54分と、妻は夫の約3.4倍もの時間を費やしています。共働きであっても、家事育児の負担は妻に大きく偏っているのが現実です。
もう限界…その前に知ってほしい家族支援制度
倉木さんのようなワンオペ生活に、限界を感じてしまう人々は少なくありません。限界を超えて頑張りすぎないために、今知ってほしい家族支援制度があります。
◇ファミリー・サポート・センター事業
ファミリー・サポート・センター事業は、子育ての援助を受けたい人と支援したい人を市区町村が仲介し、地域で育児を支え合う仕組みです。保育園の送迎や一時的な預かりなどを必要に応じて頼むことができ、共働き家庭やワンオペ育児の負担軽減につながります。
◇家事支援サービスの助成制度
一部の自治体では、家庭の家事や育児の負担軽減を目的とした家事支援サービスの助成事業を実施しています。支援内容や利用方法は自治体ごとに異なりますが、家事支援サービスや育児支援を案内し、家事代行派遣などと連携するなどの取り組みが進められています。
◇一時預かり(保育)
一時預かり(保育)とは、保護者の就労や通院、リフレッシュなど、必要なときに子どもを保育施設に預けられる制度です。保育園や認定こども園などで実施され、定期利用でなくても利用できますが、事前登録や予約が必要なケースが多いので、お住まいの自治体や施設への確認が必要です。育児の負担を一時的に軽減し、心身の余裕を保つための支援として活用されています。
ワンオペを抜け出すために、今できる小さな一歩
ワンオペ生活から抜け出すためには、家族支援制度が有効であっても、パートナーである”夫”の協力が必要不可欠です。ワンオペ生活脱却のために、今からできることとは一体何でしょうか。
◇完璧を目指さないこと
まず意識したいのが、「完璧を目指しすぎないこと」です。責任感が強い人ほど、完璧を目指す傾向があります。「栄養のある食事を作らなければ」「家は常にきれいにしておかなければ」と、家族のためを思うあまりに、自分に高いハードルを課してしまいます。
けれども、毎日完璧である必要はありません。冷凍食品や総菜を使っても問題ありませんし、家事を一日休んでも生活は回ります。むしろリフレッシュすることで、明日からの英気を養えることだってあるのです。
「できない日があってもいい」と普段頑張っている自分を労わることが、ワンオペから抜け出すための第一歩になります。
◇夫婦で“家事育児の見える化”
もう一つ大切なのが、家事や育児の“見える化”です。お互いに「やっているつもり」「分担しているつもり」でも、実際の負担に差があることは珍しくありません。
一日の家事や育児の分担を紙に具体的に書き出してみると、想像以上に一方が多くの作業を担っていることに気づく場合もあります。
見える化の目的は、相手を責めることではなく、現状を共有することです。感情論ではなく、事実をもとに話し合うことで、役割分担を見直すきっかけになります。
「共働きなのに、なぜ私だけ?」と感じているあなたへ
倉木さんご夫婦は、家事支援制度を使いながら、紙にお互いの家事や育児の分担を書き出す”家事の見える化”を実際に行ってみました。
そこで夫はようやく、「無意識に、妻にワンオペ生活を強いてしまっていた」ことに気づいたと言います。
そこから夫は、残業の多い会社ではあるものの、家にいる間は積極的に子どもの保育園の準備をしたり、お皿洗いや洗濯物を手伝うようになりました。
数カ月に一度、休みの日に一時預かりを利用して夫婦で出かけるなど、お互いがリフレッシュできるようになったといいます。
「共働きなのにワンオペ」
そう感じるのは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。声を上げることは、わがままではありません。支援を使うことも、逃げではありません。
もし今、「もう限界かもしれない」と感じているなら、その心の叫びを信じてください。小さな一歩で構いません。完璧でなくても構いません。あなたが少し楽になることは、結果的に家族全体にとってもプラスになるはずです。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。