不要になったシャツが原料のたい肥で綿花を栽培し、再び新しいシャツを作るプロジェクトが滋賀県守山市で始まった。アパレル業界では大量生産・大量廃棄や国内生産の縮小などが問題となる中、滋賀県野洲市の繊維メーカーと神奈川県のシャツメーカーが中心となり、国内での衣類の完全循環型リサイクルを目指している。
プロジェクトに取り組んでいるのは、野洲市大篠原のピエクレックス。大手電子部品メーカー村田製作所(長岡京市)の子会社で、植物由来の原料を使い抗菌効果を持つアパレル製品を手がけている一方、使い終えた自社製品を回収してたい肥化し、農作物の栽培などに活用する取り組みも進めている。
商談の一環で、メーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)を訪ねたところ、同社が3年前から国産綿を使ったシャツを製造、販売していることを知り、両社が協力することで衣類の完全循環リサイクルシステムの構築に取り組むことになった。
このほど守山市洲本町のJAレーク滋賀の農地であった苗の初植えでは、関係者ら約20人が参加。約500平方メートルの畑に、繊維が長い「超長綿」の苗500株を植え付けた。前日には市内のヤンマーサンセットマリーナと、立命館守山高にも計270株を植えた。
苗はピエクレックスの衣類からできたたい肥を使いJAレーク滋賀が育て、栽培に適した環境や管理方法などを確認しながら、11月頃に綿花を収穫、メーカーズシャツ鎌倉が買い取り、商品化する予定。
メーカーズシャツ鎌倉は「滋賀は古くから綿や麻、絹などを生産してきた繊維産地であり、高い技術力があり文化的にも根付いている。地元の人たちに再認識してもらい、繊維産業の活性化につながれば」としている。
ピエクレックスは「繊維製品を使ったたい肥で野菜などの農作物を作る取り組みに加え、同じ繊維製品に循環させることは、新しい価値になる。多方面に協力をいただきながら、循環サイクルを回していきたい」としている。