小説『阪急電車』の舞台となった阪急今津北線は西宮北口駅と宝塚駅を結ぶ支線です。正式には今津線(宝塚~今津)の一部ですが、途中の西宮北口駅で分断されているため、宝塚~西宮北口間を「今津北線」と表記します。
沿線には私立高校、私立大学があることから、学生の声が満ち溢れる路線です。また、仁川駅には阪神競馬場があるため、競馬ファンにもなじみの深い路線です。一方、ほとんど知られていませんが、今津北線は丹波、福知山へのバイパス路線でもあるのです。意外な阪急今津北線の活用方法について考えていきます。
カギとなるのは宝塚駅
先述したように今津北線は西宮北口駅と宝塚駅を結んでいるわけですが、宝塚駅は決して北近畿にあるわけではありません。カギとなるのはJR宝塚駅の存在です。阪急宝塚駅~JR宝塚駅間の乗り換えは屋根付きの連絡通路でラクラク。徒歩数分で、乗り換え可能です。
JR宝塚駅はJR宝塚線(福知山線)の主要駅であり、特急「こうのとり」も含め、全列車が停車します。宝塚駅から福知山駅までは約70分、城崎温泉駅までは約2時間20分です。
JR宝塚線は大阪駅を起点とし、尼崎駅、伊丹駅を経由して宝塚駅に至ります。このルートは大阪市側から見ると便利ですが、神戸市から見ると遠回りなルートといえます。
そこで、登場するのが今津北線です。西宮北口駅を起点とするため、JR宝塚線の尼崎経由と比較するとロスが少ないのがポイント。また、今津北線は西宮北口駅から最短ルートで宝塚駅へ至る点も大きいです。
阪急神戸三宮駅から福知山駅(今津北線経由)までの所要時間は2時間、JR三ノ宮駅から福知山駅(尼崎駅経由)は1時間50分です。新快速の速達性や乗換えの有無により、JR経由の方が10分ほど速いですが、阪急も大健闘といったところでしょう。
これが中間駅だと事情は変わり、阪急六甲駅から福知山駅は1時間53分、JR六甲道駅から福知山駅までも同じく1時間53分となり、互角となります。
運賃は圧倒的な差
所要時間だけだと「今津北線経由が有利」と言われても納得しない方がほとんどでしょう。次に運賃を見ていきます。
JR三ノ宮駅から福知山駅(尼崎駅経由)までの普通運賃は2310円、阪急神戸三宮駅から福知山駅(今津北線経由)までの普通運賃は1810円です。差額は500円、往復ですと1000円の差が生まれます。
特急「こうのとり」を使うと、もっと差額が生まれます。先ほどのJR三ノ宮駅・阪急神戸三宮駅から福知山駅まで、特急「こうのとり」を使うと、JR尼崎駅経由は4700円(通常期)、阪急今津北線経由は3540円(通常期)です。
このように運賃ですと、阪急今津北線経由の方が圧倒的に安いです。所要時間と運賃を総合的に考えると、神戸三宮駅から福知山駅までは阪急の方が利便性が高いのです。
ライバルは高速バス
神戸三宮から福知山への強力ライバルは高速バスです。日本交通が運行する高速バスですと、三宮バスターミナルから福知山駅までの所要時間は1時間30分、運賃は2000円です。高速バスと比べると、鉄道は圧倒的に不利です。
一方、神戸三宮から県内の丹波篠山へは高速バスはなく、鉄道を利用することになります。神戸市内に住む筆者は篠山へ向かう際は必ず今津北線を使います。