JR新快速にタイムはボロ負け 大阪姫路間で阪神・山陽直通特急が持つ競争力 1dayチケットで強み発揮

新田 浩之 新田 浩之

山陽電気鉄道と阪神電気鉄道が運行している山陽姫路~阪神大阪梅田間を走る直通特急。直通特急の運行が始まって20年以上が経過しますが、利用者以外の方から見ると、イマイチ利点が見つかりにくい列車ではないでしょうか。たとえば姫路~大阪間はJR新快速が約60分なのに対し、直通特急は90分を超えます。また運賃を取り上げると、山陽・阪神の方がJRよりも安いですが、それほど差はありません。一体、直通特急のメリットは何でしょうか。

大阪~神戸~姫路を結ぶ直通特急とは

直通特急は山陽姫路~阪神大阪梅田間を走る特別料金不要な特急列車です。山陽姫路~阪神大阪梅田間の所要時間は90~100分。車両は山陽車・阪神車ともに使われ、ロングシート車だけでなく転換クロスシート車が多いのも同列車の特徴です。

運行本数は日中時間帯は1時間あたり4本、ラッシュ時間帯は1時間あたり5本。停車駅は運用や利用実態に応じて複数パターンが存在します。山陽姫路~阪神大阪梅田間の運賃は1320円です。

ライバルは並走するJR神戸線の新快速です。新快速は姫路~大阪間を約60分で走破。運行本数は朝ラッシュ時は1時間あたり5本程度、それ以外の時間帯は4本です。姫路~大阪間の運賃は1520円です。

割引切符の存在がポイント

一見ボロ負けに見える直通特急ですが、実は強力な切り札があるのです。それが割引切符の存在です。2024年5月現在、山陽電鉄沿線~阪神大阪梅田・大阪難波間の割引切符ですと「阪神・山陽 シーサイド1dayチケット」(2400円・1日)、「阪神・明石市内1dayチケット」(1800円・1日)があります。

「阪神・山陽 シーサイド1dayチケット」は山陽電鉄線全線で使え、播磨町〜山陽姫路・西飾磨〜山陽網干の各駅券売機などで発売しています。一方、「阪神・明石市内1dayチケット」は西二見駅以東を対象とし、大蔵谷〜西二見の各駅券売機などで発売しています。

これらの割引切符を使うと山陽姫路~大阪梅田間はJRよりも往復640円、明石~大阪梅田間は往復100円安くなります。大阪難波の場合は山陽・阪神がよりオトクになります。

時間に余裕があり、少しでも安く大阪梅田に行きたい場合、直通特急は有力な選択肢になります。

実は直通特急は速い?

鉄道ファンの間では「直通特急=新快速よりも遅い」という図式が定着していますが、見方を変えると直通特急は新快速と同等の速達性を担保する列車でもあります。

山陽明石~西代間を見ると、JRの駅から距離があり、比較的乗降客数が多い駅として滝の茶屋駅(神戸市垂水区)、板宿駅(神戸市須磨区)が挙げられます。

滝の茶屋駅は朝夕ラッシュ時・夜間、板宿駅は終日にわたって直通特急が停車します。滝の茶屋駅から大阪梅田駅までは約50分(9時台)、板宿駅から大阪梅田駅までは約45分です。

JRを利用すると、乗り換えが必要です。乗り換え時間を含めると滝の茶屋駅から大阪駅までが約60分(9時台)、板宿駅から大阪駅までは約40分です。

山陽明石以東では山陽の線形が悪く、JRは複々線でかつ線形が良いため、JRの方が速達性に優れます。とはいえ、大阪梅田駅まで直通する直通特急があるからこそ、滝の茶屋駅・板宿駅~大阪間で互角に渡り合えるのです。

一方、運賃は滝の茶屋~大阪梅田間790円、板宿~大阪梅田間650円です。JRですと滝の茶屋~大阪間は870円(神戸三宮駅乗り換え)、板宿~大阪間700円(神戸市営地下鉄利用)です。運賃ですと、山陽は優位に立ちます。

つまり、直通特急は割引切符の活用することで、JRとの競争力を維持しています。また、JRの駅から離れた山陽明石駅以東の主要駅では所要時間の点からもJRと互角の勝負を繰り広げているのです。このように見ていくと、直通特急はなくてはならない重要な列車です。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース