幼魚に特化した水族館「幼魚水族館(@yogyo_aquarium)」(静岡県駿東郡)が投稿したユニークなカニの動画が注目を集めました。
水槽の左側から「あのー、ちょっと前、失礼しますねー🦀💨」と歩いてきたのは、モコッとした炎のような形の海藻をのせたオレンジ色のカニです。そのまま右手にフェードアウトする10秒の動画に、「あふろで~す」「かわいいw」「おしゃれさん」「これは和みますね」などとコメントが寄せられて、189万回再生、4.6万のいいねがついています。
動画のカニは、後ろ足で貝を挟んでかぶる「カイカムリ」ですが、この子は海藻がお気に入りのようで、「かれこれ1ヶ月これを持ち運んで、脱皮してもこれを持ち直しています😂 水槽ではとっても目立つので身を隠せているのかと言われるとどうなんでしょうか...」とのこと。
さらに次の日は、海藻にタツノオトシゴがくっついている動画を投稿。アフロヘアにアクセサリーをつけているみたいとポストが盛り上がりました。同水族館の幼魚保育士・布川さんにお話を聞きました。
──海藻を乗せているこちらのカイカムリは、孵化してどのくらいなのですか?
当館で孵化したわけではありませんので、正確な日にちはわかりませんが、大体6か月ほどだと思われます。2023年12月にメガロパ幼生(※)という成長段階(遊泳期)で採集し展示を開始しました。メガロパ幼生の頃は、大きさは5ミリほどでしたが、そこから脱皮を繰り返して大きくなり今では1.5センチほどに成長しました。
(※:カイカムリは、卵から孵化した幼生を「ゾエア」といい、脱皮を繰り返して「メガロパ」になり、さらに脱皮して成体と同じ形の「稚ガニ」になります)
──体にぴったりサイズの海藻は、このままの形で水槽の中にあったのでしょうか。
水槽の中に生えていたものを自身の体のサイズに合わせて切り取り、一番後ろのハサミ足で背負っています。海藻の種類はシオグサ目シオグサ科の仲間だと思います。
──体に合うようにカットするなんて、デザイナーみたいで面白いですね。カイカムリについて、もう少し教えてください。
その名の通り、1番後ろのハサミ脚で貝を持って被ります。貝の他にも海綿を切り取って被る個体もいます。また、カニといえば「カニさん歩き」ともいわれるように横に歩くと思いますが、カイカムリは動画のように前後に歩くことができます。
──確かに横歩きではないですね。水族館では、赤ちゃんだけを展示されているのですか。
幼魚水族館は、魚の赤ちゃん「幼魚」を主役にした水族館です。幼魚はまだ体が小さく泳ぐ力も弱いです。そんな彼らが生き残るためには何かに擬態したり、何かに寄り添ったり、体の形が成魚とは全く異なっていたり…。小さな体に秘められた壮大な生き様を伝えるべく展示しております。
──なるほど。ちなみに、成体になったらどうされるのですか?
毎年3月に卒魚式をおこない、他の水族館に進学していきます。今年は第二回卒魚式を行い、新潟県の上越市立水族博物館うみがたり様と、スペインの水族館オセアノグラフィック様に進学していきました。
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2022年7月7日にオープンした「幼魚水族館」は、【岸壁幼魚採集家】の鈴木 香里武さんが館長をつとめる水族館です。現在、幼魚のヒミツがわかる「すごすぎる夏の幼魚展」を開催中です(9月1日まで)。
■幼魚水族館 X https://x.com/yogyo_aquarium
■幼魚水族館 HP https://yo-sui.com