岡山と出雲市を結ぶ特急やくもに使用された旧国鉄型の振り子式特急381系が定期運行を終えた。それに切り替わる273系が運転開始されたのを記念して5月4日から発売されたのが特製やくも弁当だ。掛け紙には雄大な夏の大山をバックに新しい赤茶色の車両が写っている。やくもの全停車駅が地図で記されている上に、中央上部にトロリ線の断面図が透かしでささやかにプリントされていて、我々鉄道ファンなら見た瞬間に購入意欲の湧く駅弁だ。さらに写真をよく見ると右側にちょこんとサギらしい鳥が写り込んでいて、古き良き時代の、のんびりとした日本の風景描写にほほえましくなった。瀬戸内側と日本海側を結ぶ特急だけに、中身も山陽と山陰の食材がふんだんに使われ、容器には経木が採用してあるので駅弁ファンにとっては最高にうれしい演出だ。
掛け紙を外すと木のふたが姿を現し、懐かしさを覚えると同時に香りが良くてしばしその匂いに酔う。昔は全部この容器だったと思い出しながら中身を拝見。正方形を斜めに仕切る感じでセンターには吾左衛門鮓の鯖と穴子が1貫ずつ並び、いなり寿司ならぬ「いなりそば」と3種のすしが見える。「いなりそば」は初めて食べたが、揚げの甘さと、そばに紅ショウガの歯応えとが相まって何個でも食べられる感じがした。
その隣にはシジミのつくだ煮、ホタルイカの醤油漬け、デザートの白桃が入っている。その左右、全体の3分の1ほどの三角のスペースには、こちらも有名なベニズワイガニがしっかり入ったかにずしが占める。米吾さんの売れ筋駅弁3つを少しずつ一度に食べられて、満足すること間違いなしだ。
反対側のおかず三角ゾーンのチキンカツはメンチカツ状でソースとの相性抜群。
サワラの西京焼きは濃すぎない味に好感が持て、レンコン、椎茸、ニンジン煮物は薄味で調製されている。ちくわの磯辺揚げは風味がよく、鶏もも肉の照り焼きとねぎは、焼き鳥のねぎまをほうふつさせる味だ。
デザートの白桃は硬めで歯応えよく最後までおいしくお得感一杯でいただけました。
これだけ色々なものが食べられて、食塩相当量は1.2グラム(推定値)。期間限定販売とのことだが、もう一度食べたくなったので、特急やくもが次の車両に代わるまで販売を続けてほしいと願うほどの素晴らしい駅弁だ。
1620円。6月30日までの個数限定販売。山陰本線・米子駅「㈱米吾」☎0859261511