更新される「過去最低」と「衝撃」 出生率1.20 「結婚しない若者」それとも「結婚後に子どもを持たない夫婦」のせい?

新居 理有 新居 理有

日本の出生率を引き上げるには

日本の出生率を引き上げ、少子化問題が解決に向かうには何が必要なのでしょうか。

まず前提として、出生率を引き上げ若年人口を増やすのは長い時間がかかります。仮に今すぐに出生率が大きくなっても、若い世代の人口が増えていくには10〜20年といった長さの取り組みが必要です。さらに出生率自体が、今すぐ手をうっても急に上がるものではないと考えられます。

そのうえで、婚姻数や結婚後の出生数はなぜ減少するのでしょうか。出生率を向上させる政策を進めるためには、原因を整理しておくことが重要です。こうした課題に対して、数多くの研究が進められています。

たとえば婚姻数が減る要因として、賃金や年収、雇用形態、労働時間、親との同居などが強い影響を持つと多くの研究で示されました。近年では結婚支援の取り組みが、婚姻数の増加につながると示した研究もあります。一方で、結婚後の出生数は、晩婚化や経済負担の大きさに伴って減少すると分析した研究が多いです。保育環境が整備されていると結婚後の子どもの数が増加する傾向にあるとも明らかにされています。

出生数をあげて人口を増やしていく取り組みは、こうした知見を生かしつつ、息長く続ける必要があります。長い時間がかかっても、子どもを持つのを妨げるような制度を見直していくことが、私たちのとり得る解決策でしょう。場当たり的に対策するのではなく、研究成果をもとにしながら、優先順位をつけて制度の見直しや政策を進めることが大切です。

【参考】
▽厚生労働省「人口動態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
▽国立社会保障・人口問題研究所「人口資料統計集」
https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2024.asp
▽内閣府ESRI Research Note「少子化対策と出生率に関する研究のサーベイ」
https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/e_rnote/e_rnote070/e_rnote066_01.pdf

   ◇   ◇

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

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