掛け紙に東海道山陽新幹線の食堂車が描かれていて、懐かしさのあまり手に取った。家族連れがおいしそうに食事し、ビジネスマンが出張を終えてビールを交えて談笑するなど、古き良き時代の雰囲気が伝わってくる。車窓には富士山、名古屋城、右大文字、大阪城、通天閣らしき絵が見え、椅子のオレンジまで再現されている。私が最も思い出に残るのは学生時代、新大阪で乗車と同時に食堂車に飛び込み、姫路までの短い時間でうなぎ定食を注文し、ハラハラしながら出来上がりを待って、大急ぎでかき込んだことだ。この日、私も東京での仕事を終えて同じ気持ちで箸を割った。
「米沢牛の三種類の味と食感が楽しめる!」のうたい文句通りメインを張る牛肉料理は3種類で、まず目を引くのは牛焼き肉。約5cm×7cm厚さ5mmのものが2枚入り、薄味で素材の良さで勝負している感じだ。お隣はそぼろ。粒は小さいが甘い味付けでご飯を誘う。最後は牛肉煮。とろりとした甘い味付けで一緒に煮込まれたゴボウが歯応良く、だしを吸い込んだおかげでおいしさを増幅している。
緑色はニンニクの芽を使い、味が移らずささやかなたたずみで彩りが良い。白ゴマもにくい演出だ。
別枠の卵焼きは甘めでふっくら。ピンポン球ほどの大きさがあるコンニャクはピリ辛で、紅大根の酢漬けは唯一酸味を感じる副菜となっている。
食塩相当量が推定値で1.5グラムというのも我々中高年にとってはうれしい味方だ。
1500円。東海道新幹線・東京駅「㈱松川弁当店」☎0238290141。東海道新幹線のぞみ停車駅でスポット販売などもあり。