まずはトライすることで切り開いたキャリア 株式会社HiOLIの代表者が語る「社会問題を解決するスイーツ」とは

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おいしさなしには、社会貢献も実現できない

―それにしても、バターの製造過程で生まれた脱脂粉乳を活かしてスイーツを作るというのは、他のメーカーではあまり行われていないのでしょうか

(西尾)かなり珍しいことだと思います。脱脂粉乳はその名の通り、油分がないため濃厚さを出すことができないからです。

ただ、そうしたデメリットにばかり目を向けるのではなく、メリットに目を向け、香料としたり、生地に練りこむことで風味豊かなスイーツに仕上げることができています。まさにアップサイクリングを実現できていると感じています。

―香料や生地に練りこむといった活用方法を見出すのに、試行錯誤を何度も繰り返されたのではないでしょうか

(西尾)2年弱のHiO ICE CREAMとButtersの開発期間に、何十回、何百回も試作品を作りましたし、試作品でうまくいったとしても、それを量産するとなるとまた工夫が必要です。

現在、当社で活躍しているパティシエと出会ったことで、徐々に量産体制も築くことができるようになりました。

―そうした苦労を経て社会課題を解決するスイーツが生まれたということなのですね

(西尾)その通りです。ただし、スイーツですから社会課題を解決することよりも、まずはおいしいことが優先されなければなりません。「社会課題を解決するために食べてください」と言っても購入してくれる方は多くはないかもしれません。

脱脂粉乳を使うのも、それをうまく活用することでおいしいものが生まれる確信が持てたからです。また、実際においしいと感じていただけることで、少しずつファンも増えていきます。

そうなれば、意識せずに自然と社会貢献につながる活動をする人が増えていくことにつながります。

大手メーカーをはじめ、お客様は様々な選択肢の中からスイーツを買うことができますが、私たちは合成添加物を使わず、社会貢献につながる脱脂粉乳を活用したスイーツを生み出すことを差別化のポイントとしているのです。

―脱脂粉乳を使うことに加えて、原材料も北海道産のものにこだわっているとお聞きしています

(西尾)会社をつくった当時は生産者の方とのパイプはありませんでしたので、ゼロから人脈を築き上げていきました。

レンタカーだけ借りて北海道に行き、稚内から札幌までを南下していく道中で売られている牛乳などを口にし、これは良いものだと思ったら酪農家の方に電話をして「今から伺ってもいいですか?」とその場でアポイントをとっていました。

いま使っている美瑛町の牛乳も、たまたま道の駅で休憩していた時に買ったものがおいしくて見つけることができたものです。

もちろん、最初から北海道のものと決めていたわけではなく、当時は全国40ヵ所ほどの生産者のもとを訪れました。

より濃厚な牛乳の産地もありましたが、「濃厚さと軽さのバランス」をテーマとしており、絶妙なバランスだったのが北海道の生産者の方で、お願いすることにしたのです。

―すぐに原材料を提供いただけたのでしょうか

(西尾)もちろんそうではありません。何度もお時間をいただき、私たちのことを好きになってもらうためにこちらの姿勢を示していきました。

ただ、起業から2年、3年と経つにつれて徐々に厚い信頼関係が築けるようになり、最初にお願いした生産者の方から別の方をご紹介いただくなどして、輪を広げることができました。まさにご縁あっての繋がりです。

―これからの目標や展望について教えてください

(西尾)何か大きな展望があるわけではなく、まずこの事業を続けていきたいという思いがあります。長く続けるほど、脱脂粉乳の問題も解決していけますし、私たちに協力していただいている生産者の方にも貢献することができます。

そのために、商品をお買い求めいただくお客様の様子や反応も見つつ、より良いお菓子作りを続けていきたいですね。

―お客様からの声を商品の改善などに活かされているのですね

(西尾)お客様から頂いたご意見は貴重ですので、大いに参考にさせていただいています。ただし、お客様の声だけで商品改善や新商品の開発をしているわけではありません。あくまでも大手メーカーが作れないような、私たち独自の付加価値のある商品づくりが第一にあるのです。

また、商品の売れ行きなどもお客様の声だと考えています。新商品をお買い求めいただいたお客様が再度購入されない場合、何か原因があるはずです。そのポイントを探るうえで売れ行きといった数値データも参考にしています。

いいキャリアを築くには開心すること

―ここまでお話いただきありがとうございました。最後に読者へのメッセージをお願いいたします

(西尾)まずはやってみたいことを実行したり、挑戦してほしいと思っています。私もたくさんの失敗をしてきましたが、転職や起業をしていく中で多くの仲間との繋がりを築くことができました。これは行動したことがあってこその財産です。

たしかに、行動できない理由や事情はあるのかもしれません。しかし、自分が実現したいことやその理由を真剣に考えると、実はできない理由よりも数多く出てくるのではないかと思っています。

まずは、自分自身が成し遂げたいことに目を向けてみてください。また、「行動する」というのは転職や起業することだけではありません。今の会社に留まり、いま担当している仕事の意味を見直したり、やり方を変えていくことも立派な行動です。

それから、これから就職活動をされる方には、どんな規模の会社であっても成長できるということをお伝えしたいです。ベンチャー企業や小規模の会社であれば様々な仕事を担当し責任領域も広く、それだけで成長していくことができると思います。

一方で大企業の場合には責任領域は狭いかもしれませんが、社会に与えるインパクトの大きな事業にかかわることができます。重要なことは自分が幸せだと感じられる会社や仕事に巡り会えるかどうかだと思います。

参考までに、当社では採用にあたって「開心できているかどうか」をポイントにしています。たとえ経験が浅い方であったとしても、「やってみたいこと」が明確な方が伸びしろが大きいと感じているからです。心を開いて就職先を探すほうが、幸せを感じられる会社や仕事が見つけやすいのではないでしょうか。

【株式会社HiOLI(ヒオリ)】
2018年8月設立。東京・自由が丘に自社工房を構え、クラフトスイーツの製造・販売を手掛ける。全国から厳選した素材を集め、香料・着色料といった合成添加物を使わない上質なスイーツを生み出している。パーパスは「乳の価値をアップデートし、やさしい社会生活を創造する」こと。

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