スーパーマーケットの店頭に掲げられたポスターが話題になっています。「従業員の身だしなみ 多様化、始まる。頭髪・ネイル等の基準を大幅に緩和しています。お客様のご理解ご協力をよろしくお願いいたします」。こう打ち出したのは、首都圏に135店舗を展開する「株式会社ベルク」(本社・埼玉県鶴ヶ島市)。約8880人いる従業員の多様性や個性を尊重し、男女問わず、勤務中の髪色やアクセサリー、ネイルカラーなどの基準を緩和するというものです。同社人事教育部の部長、大杉佳弘さんに話を聞きました。
導入から1カ月、来店客の反応に変化が
同社では9月1日から、勤務中の髪色と髪型が自由になり、ヘアアクセサリーとピアスも装着可能に。指輪は突起がないもの、ネックレスは衣服の上に掛からなければOK。また、付け爪はこれまで通り禁止ですが、ネイルカラーは認められるようになりました。いずれも「常に衛生的かつ清潔であり、お客様に不快感や恐怖感を与えないこと。作業性と安全性を考慮し、業務に支障を与えないこと」が前提条件です。
緩和した背景には、若者のファッションの変化や、外国人労働者の存在がありました。
「若い世代を中心に髪色や髪型などのスタイルの多様化が進む中、多様性や個性を尊重していくことの必要性を感じておりました。また社内にはさまざまな外国人材が勤務しており、ダイバーシティの推進と人材活用の観点からも、身だしなみ基準を大きく見直す必要があると判断しました」
変更直後、来店客からは「金髪の店員さんがいる」と驚かれ、スーパーにはふさわしくないという批判も寄せられました。しかし1カ月が経過し、徐々に変化が現れたといいます。
「不安視する声は少なくなり、最近では接客に対するおほめの言葉とあわせて、身だしなみの多様化に好意的な声もいただいております。ピアスやネイルに対する衛生面のご意見もありますが、弊社では爪の長さの基準があり、また頭髪キャップで耳を出さない、生鮮部門は専用手袋を着用などの対応をとっており、衛生面での問題はありません」
SNS上でも9月後半から、「近所のベルクに金髪でテキパキ働く男の子がいる」「髪色自由だけどちゃんとしてる」「ツーブロックの女の子いるけど感じいい」などの投稿が見受けられるようになりました。
従業員「モチベーションが上がった」
従業員からは圧倒的に歓迎する声が多く、人事部門の大杉さんの目から見ても「従業員の表情が明るく、笑顔が増えたと感じます」。働きぶりにも変化があったようで、「より良い接客に向けての意識が高まり、行動にも変化が出てきていると感じます。手応えを感じています」。実際に「モチベーションが上がった」「今まで以上に接客に対して意欲的になった」と話す従業員もいるそうです。
求人にも思わぬ効果が。アルバイトの募集広告に「髪色髪型自由!」と大々的にアピールしたところ、応募件数が増加。「具体的な数字をご提示することは難しいですが、身だしなみの基準緩和によるプラスの影響は大きく、応募者の変化は確実にありました」。また取り組みを社内で発表後、退職を撤回した学生バイトもおり、「人材の繋ぎ止めにもなっています」。
大杉さんはこれまでのことを「スーパーマーケット業界は変化対応業でありながら、髪色や服装等の第一印象や見た目に対する固定観念が根強く、その結果これまで身だしなみへの大きな変化がありませんでした」と振り返り、今後については「髪色や髪型ではなく、笑顔でフレンドリーな表情や接客態度により、お客様に好印象を与えていけるよう取り組んでいきます」と意気込みました。
SNS上には「いい取り組み」「どんどん広がってほしい」など賛同する声が多く、「客側も意識を変えないと」といった声も上がっています。